「平均の速さ」の行き先

小6で習う「平均の速さ」はどこへ向かうのでしょうか?
「車で家を9時に出発して,12時に150km離れた公園に着きました.この間の平均の速さは,もちろん50km/h です.
計算式は,次のようになります.

数学を学ぶ際,ずっーとこの式(※の形)が付きまといます.

1 流れの確認

  小6   平均の速さ
  中2   変化の割合(一次関数)
  中3     〃  (二次関数)
  高2~  平均変化率,微分係数,導関数(数Ⅱ微分~)
注:高2微積分の導入部分で登場するということですので,数学を学ぶ上で,※と「縁」を切ることはできませんね.

2 グラフで確認する平均変化率(平均の速さ)

速さは,移動距離を時間で割って求められます.つまり,位置の変化する割合です.

ここで,右図のように,時刻をt(横軸),位置をs(縦軸)としたグラフ(st図)で,速さを確認しましょう.

なお,時刻tにおける物体の位置sは s=f(t) であるとします.

 ※で,このあとbをいろいろと変化させるために,xと書き換えます.

09 20200506平均の速さxa

この値は,右図上ではどう表されるでしょう.

平均の速さは,直線m:PQの傾きであり,tanθ と一致しますね.直線mを割線(かっせん)ともいいます.ナイフで曲線をカットするイメージかな.

つまり,平均の速さ=割線PQの傾き (ただし,st図の場合に限る)

ここで,aは固定して,xをaに近づけます(ここでは x>a とします).

 例:x-a = 3 , 2 , 1 , 0.3 , 0.1・・・(時間) 

割線m(つまり,平均の速さ)が変化します.右図では,割線が点Pを中心に時計回りに回転します.

この操作を細かく続けると,1秒間における速さにもなりますね(秒速).

もっと続けるとどうなりますか?

ついには,x=a における速さになりそうですね.

このときは平均ではなく,瞬間の速さ です.

また,mも割線よりも接線と言った方がベターでしょう(右図下).

<マトメ>

① 平均の速さ(小6)は,高校の微分までつながっている

② 点Pにおける瞬間の速さ=接線の傾き

 

 

 

09 20200505割線連続
09 接線

3 残った課題

ただし,これで終わりとはなりません.次の2つの疑問(難問)に答えなければなりません.

先程,瞬間の速さを説明する際,x=a としましたが,実はこれは「まずい」のです.もう一度右の※2の式をみてください.x=a とすると,※2の分母はどうなりますか?0ですね.数学のルールでは,0で割ることはできないのです.

← この「0で割算不可」については,後日,ブログのテーマとして取り上げる予定です.

09 20200506平均の速さxa

ゼノン(古代ギリシア人)の逆理

「矢は飛べない.なぜなら,瞬間において矢は静止している.どの瞬間も同じだから矢は位置を変えることはできない.したがって,矢は飛ぶことはできない」

09 20200506静止矢

※逆理(パラドックス):普通の判断とは明らかに異なるのだが,それに反論する論拠が見つからないものをいう.ゼノンの逆理はいくつか伝えられているが,2500年過ぎた今日でも未だにパラドックスである.

ゼノンの主張によれば,瞬間において物体は静止している.したがって,つねに「速さ=0」ということになりませんか.すると,先程のマトメ:瞬間の速さ=接線の傾き が崩れてしまいます.さて,どう考えていったらよいのでしょうか.・・・いろいろな経緯を経て,極限という考え方にたどり着きました.

4 極限へ

割線が接線へと変身していく説明は,図形的には理解できるにしても,これまでの計算原理からすると,無理筋な面があります.そこで”極限”という概念を取り入れて理論を構築しました.舞台は17,18世紀のヨーロッパです.

← 極限については,後日,ブログのテーマとして取り上げる予定です.0.999……=1 なども登場します.

 

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