9の次は10?
10は9より1大きい数として,小学校入学して真っ先に習います.この10ですが「当たり前」と思わず,10も含めて数の表し方について少し立ち止まって考えてみましょう.漢数字では{一,二,三‥‥,十(じゅう)},やまと言葉では{ひとつ,ふたつ,みっつ‥‥,とお},ローマ数字では{Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ‥‥,X}と書きます.
現在,日本も含め世界の子どもたちは,アラビア数字(インドが発祥地のようです)を用いた十進法による数を習います.その意味で,数は世界共通言語(記号)とも言えますね.
小1算数の目標から
年長さんから上がってきたばかりの子どもたちですから,いろいろな実態があり,先生たちは何かと大変です.ある市の教育長さんは「今,小学校が一番大変です」と述懐していますが.今日的な時代背景もあるようです.そんな中,算数は「進め」なければなりません(ほかの教科も同じ!の声もありですね).
学習指導要領(国の基準)解説には,小1算数「実際的には”具体物を用いるなどして,数の大きさや数のまとまりに着目してその意味や表し方についての経験を積む.‥‥その後の数の仕組みを学ぶ素地としての見方を育む」とあります.
実際に教科書を開きますと,全ページカラー刷りは当たり前として,説明文は少なく,イラストがほとんどを占めており,絵本と間違うほどです.
例:図では木の本数をそれぞれ2,5とするといった具合です.なお,数の筆順も大切にしたいですね.ここで身に付かないと,後の修正は難しいです.
展開例 と 留意点
1から始めて9までが第一段階です.習うより慣れろという状況です.
←「”ペアのキジ(鳥)”と”両日”は,いずれも2という数の実例であることを人類が発見するには多くの時代を要したに違いない」とはバートランド・ラッセルの言葉ですが,確かに,2という数が道端に落ちているわけではありませんね.大げさに聞こえるかも知れませんが,人類の数万年?にも及ぶ学びを数時間でやってのけるのはしんどいことです.
なお,0は特別扱いです.タイミングは9の後での取り上げでしょうね.
さて,10です.「9より1大きい数を10と書き,じゅうと読みます」,とアッサリと進めるケースがほとんどでしょう.
そして,10より1大きい数を11,2大きい数を12と書きます‥‥と続けて19まで進むのですが,大きな壁に当たる子どもが出ます.
それは,「じゅうさんを書いてごらん」という問いに103と書く子どもです.必ずいます.
「そうじゃなくて,13と書くのです!」と押し付け暗記の形に持って行くことはワーストです.作戦を練っておきましょう.
← 児童の年齢(発達段階)や個人差を考慮すると,この説明パターン以外はあまり思い付きません.
← 間違って当然という感じさえします.子どもの立場で言えば,「10と3でしょ.だから103」.気持ちはよく分かりますね.
この間違いは大いに歓迎すべきで「よくぞ言ってくれた」です.この声をチャンスととらえ,是非,活かしましょう.
実によくできている十進法
世界は広く,21世紀の今日でも{1,2,いっぱい}という3種類の数しかない未開の地もあるようです(”いっぱい”は数でない?).バカにしてはいけません.私たちの祖先も同じだったでしょう.
ところで,私たちが,”普通”使用している数は十進法によって表記されています.
十進法とは,{0,1,2,・・・・・,9}の10種類の数で,無数にある数をすべて表わすことのできる極めて合理的で優れた記数法です.
つまり,10個しかない有限の手持ちで,無限の相手を”屈服”させたといえましょう.
← コンピューター内部での数値は,2進法や16進法による表記が適している.
← 「10種類の数を用いて」と書いた瞬間,すでにこれから説明する”10”を使用していることが辛いところ.
じゅうさんを103と書かせない
じゅうさんを103と書く子どもは,じゅう と さん と別々に聞き取り,とを省いて103とする感じです.どうでしょうか.
このようなときは,同じ方向で説明を続けるよりも,別視点からの説明で,なるほどと納得してもらう方がベターかも.
教科書での扱いは
- 小1:一と十の位
- 小2:万までの位
- 小3:億までの位
- 小4:兆までの位 となっています.
ところで,日本では
① 漢数字があって今でも使用されている(特に読み方:例 いち~ひゃく)
② 現金が世の中に浸透していて, 日常的に,10000円や1000円紙幣,100円,10円,1円の各硬貨を目にする機会がある
という状況下にあります.これを使わない手はありません.
←小1でも1300円などお金は数えられるケースが多いのでは(キャッシュレス不浸透のお陰?).
←「路上の数学」という視点もある.生活数理が身に付いている仮定の下,万の位まで扱う中で,十の位もよく見え,全体像がより分かるであろう.範囲外などと言わずに「教科書で教える」姿勢を!
<マトメ>
■ 「ひゃくまで数えるんだよ」「は~い.いち,に,さん,し,・・・,ひゃく」「やったー」・・・昔も今も家庭内でよく見られる光景かと思います.
■ 小学校入学前後の子どもは,ある程度の数を順に覚え発しています.このようにあまり気負うことなく身に付いている数的な処理(記号含む)能力を学習に利用しないことは,もったいない話です.家庭の学びと学校の学びの分断にもつながります(そもそも学校の学びは「後発」).
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