コピー「1万円借りて利息10円/日」に釣られる

今,流行の金銭教育ではなく,「金銭感覚」についてです.かつてJR山手線内で「1万円借りても利息は1日たったの10」という中つり広告(最近はお目にかからなくなりました)を目にしました.結構な反応があったものでしょう.このキャッチコピーの感想を聞くと,今でもほとんどの人が「安い」といいます.

お金を巡るトラブルでは,しばしば「だまされる人」が登場します.「だまされた」場合,自己責任という見方がなされがちですが,果たして学校教育(特に算数数学)は無関係でよいのでしょうか.

高校生や学生に質問します.

 「年利率15%で100万円借りた.1年後は115万返すことになりますね.では,返さないままにした場合,2年後にはいくら返すのですか?」

130万円という答えが少なからず出ます.

(正解:132.25万円)

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誤答した人は,今日,利息は複利計算であって,単純な単利計算ではないこと,つまり,”利息が利息を生む”のイミが分かっていないのでしょう.この例に象徴されるように,金銭についての持つべき常識イロハが浸透していない(→ 知らない or 知識が活かされない)という”危うさ・脆さ”を感じております.

どこで学ぶべきだったのでしょうか.家庭か学校か.学校であれば,校種はどこですか?

預金・借金は複利計算が常識

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■ 現在,借入れの上限金利は年15%(100万円以上)です.今,金利15%で100万円借り10年間そのままにすると,支払うべき総額は,約405万円になります(単利の場合は,250万円).

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09 20200802指数1次比較

■ 計算式の知識理解だけでなく,もっと重要なことがあります.

■ それは,金銭だけでなく,「量」一般に対する”リアリティ感”の充実です.例えば,冒頭で示したキャッチコピーで考えてみましょう.

■1万円に付き,1日10円の利息

→ 1年間では?

→ 3650円! 利率にして 36.5% !

→ 現在では,利息制限法に違反する数値

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”量感”を抽象的に理解していませんか?

■ 法令違反の利率36.5%!これがどういう数値か,体感しなければなりません.

■ 仮定の話です.事情により100万円が必要な人がいます.

今,先程のコピーに釣られて100万円借りたとします.1年後の元利合計は1,365,000円です.

「事情」により借金した人が,1年後に全額を耳を揃えて返済することは?

かなり厳しい状況かと考えます.なぜなら,収入環境が劇的に好転する可能性はあまり当てにはできないと判断するからです(経験則).

■ すると,せいぜい利子分の365000円を払うのが精一杯というケースが多いかも.

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■ 説明としてこれだけで十分ではありません(対象として学生や高校生を想定).まだ,数値にリアリティ感が伴っていないのです.

学生とのやり取りを再現します.

「今,あなたはアルバイトしていますか?収入は月にどの位ですか?」

「平均すると,月3万円程度です」

「小遣いや通信費に充てているのかな.ご苦労様.仮に,まったく手を付けずそのまま貯めたとします.1年では?」

「36万円です」

「いいですか.先程の借金の例を思い出してください.利子だけで365000円を返さなければならないのです.あなたが我慢して貯めたバイト料全額でも不足ですよ.どうです?頭にくるでしょう.」

「さらに,深刻なのは,苦労して365000円を払っても,元金100万円はまったく減らないという事実です」

「このように,”毎年,利子分だけの返済サイクル人生を送る”というケースもありましょう」

「私たちは,通常,どこかの節目に高額の借金を抱えます.結婚や家の購入,病気ケガ,子供の進学等々に関わる場合が想定されます.返還の仕方もさまざまです.ローンの形が大半だろうと推測しますが,基本は”元金と利子”.そこをキチンと峻別して,多少余裕を持った判断で物事に対処していきましょう」

数値にリアリティ感を抱かせる工夫を

■ 数はそもそも抽象的なモノです.金銭も数値で示されるのですが,特に,具体例で理解をする・理解させる必要があります.

■ それには,学習者(学生・生徒)の視点に立つことが肝要です.先程の例で言えば,金額を自分で稼いだバイト料に落とし込んで初めて”抽象的”金額が現実味を帯びるわけです.

 

■ 今回は,金銭という量でした.長さや広さ,重さ等々の量を扱う際も,”落とし込む”術を身に付けていきたいものです.是非,実践例を紹介してください.

<追記>

■ 次回テーマは,「前々からよく分からなかった問題」です.(予定)

数学では未解決問題を筆頭に,そんな「難題」はいくらでもあるわけです.

で,多くの人が納得している(と見える)問題の中で,どうも「スッキリ感」の得られない問を紹介します.

生徒の皆さんの夏休み課題としていかがでしょう(エッ!夏休みが短縮でそんな余裕ない!ですか).

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