寒っ! “空間認識力”
■ 数学自体に対して,得意・苦手 と2極化する傾向があるのですが,その中でも空間図形に関わっては,超がつくほど毛嫌いするヒトも少なくありません.
■ よくあるサイコロの問題.3の目を書き足してください(向きにも注意).
全国学テ から”寒い”現実
■ 現状の一端を紹介します.全国学テ結果です.小6:2014(H26)実施
■ 何のことはない,直方体を真上から見たらどんな形?という問いかけなんですね.しかも4択.「これが問題か!子どもをバカにしている」とフンガイするヒトもいそうですが・・・.でも実態は?
■ 正答率:69.6%(全国)
■ 7割正解だから〇としては絶対いけません.
なぜなら本問のような内容は,必須学力であり,学力保証に深く関わるからです.限りなく100%正解でなければなりません.
そりゃムリだという声が!?無論,多様な子どもがいる実状は分かります.
が,追究する姿勢は信頼に繋がります.
■ 本問について
① この種のストレートな問いかけは,通常,”怖くて出題できない”ものです.
「これは”前提”であって,改めて問う内容ではない.これが分かってなきゃ,先へ進めないよ.ただ,仮に誤答者がいたとき,どうすればよいのか・・・.まあレアケースだろう」といった心境ではないでしょうか.
② 誤答30%のうち,問題文自体が読み取れない,何を問うているのかその趣旨が理解できない子どもも結構いそうですね.
→ 算数以前の読解力不足が主原因?
この際,読解力も含めての,算数・数学の学力と定義して,改善策を講じましょう.読解力=国語 ではありません.読解力向上には「全方位」の作戦が必要です.
まずは,空間認識力の意義&意味を確認します.
空間認識力はなぜ重要か
■ 次はやや抽象的な解説ですが,大方の同意は得られる内容かと.
■ 3次元に住んでいるヒトが,3次元の空間認識が弱いというのは何とも皮肉なこと.特に,スマホ全盛期の今日,各立体図形に対して,スマホのきれいな映像で「分かった気にさせられる」ことはないでしょうか.大いなる警戒心を持つべきです.
なぜなら,画像で納得しても,その認識(信号)が頭脳まで届かないと,「脳」自体は鍛えられないからです.停滞=退化 という自覚を持つべきです.
改善案 ① なぞって写す
■ まずは,前述した全国学テの誤答者(約30%の層)を念頭に改善案を紹介します.おそらくモノをスケッチ(→ ワイヤーフレーム)する作業も手こずるかと.
当面,遠近感は無視して,次の問に挑戦させましょう.
Q1 次の①~④について,左図と同じ形を右側に書いてください.
Q2 次の⑤⑥は,それぞれ1分間図を見てください.(1分後)図を伏せて,同じ形を解答用紙に書き表してください.
■ 結構,作業に難儀するヒトがいますよね(確実にいます).その際,たとえば,⑥の場合,直方体の計12辺の中で”核心”となる3辺(1次独立の3ベクトルがベース)を見出せると,他の辺はそれらに平行線を引いて作図できることを体感させたいもの.この発想は他の場面でも活用できますね. → 例:辺a,b,c に注目!
改善案 ② 途中のイメージ
■ 次は冒頭のサイコロについてです.サイコロの”動きが見える”ヒトにとっては「なぜ,これが分かんないの?」ということでしょう.
ここでは,”見えない”ヒトについて話題にします.”見えないヒト”には共通する態度がありますね.それは「あ~ぁ ムリ・ムリ!」という”all or nothing“の姿勢です.サイコロ以外の場面でも参考になることを願いながら,ささやかな改善案をどうぞ.
■ 最終的にはイメージ力ですが,前提として,スケッチする力 をつけましょう!
■ まず,上図で左のサイコロを時計回りに90°くらい回転すると右サイコロになることはOKですね.
Q3 次のサイコロについて,3の目をその向きにも注意しながら,展開図に書き入れてください.
A3 解法にはいろいろありますが,イメージ力をどこかで発揮することは必須です.上図で,右下の展開図までの途中スケッチを描いてみましょう.少しずつ動かしていきます.その際,スケッチはラフで構いません.pointは,●⇔ うら と変換する個所です.イメージ力はここでupします.
空間認識力は”先天性”か?
■ 最終的には,スケッチすることなくイメージ力(=念頭操作力)で解決しましょう.
空間認識力は先天的なモノという見方も根強くあります.しかし,先天性に帰着 ⇒ 教育不要 となりますね.どこまで先天性論に反論できるか,小さい実践を積み重ねていきましょう.
<補足>
■ 今回例示した内容が「どこが問題なの?」と,物足りなかった方は,是非,円柱貫通体①,円柱貫通体② へご訪問ください.
■ 次回テーマは,「植木算」です.たかが植木算と軽視してはいけません.ぞんざいな扱いされているのではと心配しています.
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遅くなりましたが、ブログ1周年おめでとうございました。
頭がなかなかついていかないのですが、毎回楽しく拝見しています。
さて今回の設問、昔読んだマーチン・ガードナーのサイコロパズルを思い出しました。
A3に「解法はいろいろがありますが」とあるので、その一つだと思いますが、「サイコロは上面下面の合計が必ず7になるように数字が配置されている」と、「サイコロは右回りと左回りの二種類がある」を知っていれば、スケッチの手間なしに答えにたどり着きます。
右回り、左回りは、サイコロの(1,2,3)または(4,5,6)の3面が見えるように置いたとき、数字の並びが時計回り(右回り)なのか、反時計回り(左回り)なのかということで、設問の図のサイコロは反時計回り=左回りのサイコロということになります。
このことを知っていれば、Q3図の1の左に2、2の左に3で、3の位置はQ3図の展開図では1の見えない左となります。(あれ?かえって面倒くさくなったかな?)
空間認識は、確かに得意な人と苦手な人がはっきりしてますよね。ちょっと前に『話を聞かない男、地図が読めない女』なんて本がありました。道案内に男女差があるという説も読んだことがあります。おっと、ご時世柄、深入りは自粛します。
ところで、2021年1月25日の『坂のθ(角)を測るヒトはまず「いません」』の回。地学を学んだ古い生徒は、クリノメーターで傾斜角を測る実習がありました。クリノメーターは鉛直おもりと水準器、コンパスを組み合わせたもので、今ではスマホの無料アプリとしても提供されています。どうかいつか実物をご覧ください。空間認識に役立つように、コンパスのEWの位置が入れ替わっていて不思議です。
ついつい長くなってしまいました。
次回、植木算も楽しみにしています。
樽じい 様
地味なblogへの「ご反応」に深謝いたします.
・1周年まで触れて戴き,これまた深謝の2乗です.昨年の今頃,すべてに慣れていなくて悶々としており,実際のスタートは5月中旬でした.地元紙に取りあげられたことがきっかけになった次第です.これからも是非,地味系・昭和系の当blogをよろしくお願いします.
・マーチンガードナーの名前だけは知っておりましたが,ご紹介ありがとうございました.適当に選んだサイコロでしたが,左回転に分類されるのですね.改めて認識いたしました.
・今回は立体感覚というテーマでしたが,発端は,図の書けない・図が苦手の生徒や学生と多く出会った経験でした.平面図形も書き慣れていない,それも小さくで不正確な状態なので,立体などはさらに・・・.遠近感云々以前のレベルで「悩まされました」.高校入試までは,ほとんど相手(出題側)が「図を書いてくれている」という実態も関係ありそうです.
・クリノメータのアプリ,やってみました.カンドーですね.三角定規を当てて角度を比べましたが,「正解」ですね.早速,知り合いに伝えます!.
まずはお礼まで