グラフ ⇒ 増減だけ?
今日,コロナ感染者数や気温,人口,経済の変動など,グラフに接する機会は日常的です.
そのグラフですが,数学教科書に基づく授業展開は,当初から”増減”メインで,それ以外の分析視点が欠けていませんか?

■ 2次関数や3次関数,三角関数などでグラフを扱いますが,”入試問題解きのためのグラフ”という色彩が濃く,グラフ自体にもっと焦点をあてるべきです.
■ 変化の特徴をどうとらえ,その式化はどうするのか?
この視点を踏まえた上で,その基本の基としての”増減と凹凸”としたいものです.
■ 次のようなグラフがあります.

左:連続(切れ目なし)ですが,尖っている点(微分不可)があり,滑らかではありませんね.
右:x=2 に対応した点で,途切れています.不連続点と言い,身近な例には,タクシー料金があります.
「基本料金・・・2kmまで700円」の場合,2kmに届いた瞬間,メーターが上がりますよね.あの”ショック”点です.
これらは本テーマでは触れず,連続で滑らかなグラフを対象とします.
グラフのどこに注目?
Q 次のグラフを観察して,特徴を指摘してください.

■ 山の頂上(極大点)と谷底(極小点)に目をつけ,その前後の増加と減少を挙げるヒトが大半かと.
増加 → 極大点 → 減少 → 極小点 → 増加 → 極大点 → 減少

■ 上のグラフで,増加・減少(=増減)部分は2ヶ所ありますが,増減の仕方は同じではありませんね.
→ 特に,最後は,なだらかな減少で,次第に直線に近くなっていっています.
カーブにも違いがある

■ 極大点・極小点ではなく,グラフのカーブの仕方に注目すると,図のように4区間に分けられます.
左から順に,上に凸・下に凸・上に凸・下に凸 といいます.その境目となる点を変曲点と言います(下に凸=上に凹).

コーヒーの冷め方
Q コーヒーを入れたところ90°cでした.時間の経過とともにコーヒーは冷めていきますが,冷め方を表すグラフを描いてください(①~③から選ぶ).コーヒー温度y, 時間t , 室温20°c とします.


A まず,yは減少関数です.なぜなら,加熱しないし,室温も90°より低いので.
したがって,3本のグラフとも減少関数となっています.が,①,②は正しくありません.理由を考えてください(解説は後述).
正解は③で「下に凸」の曲線となります.また,直線y=20 は,③の漸近線です.
このように,コーヒーの冷め方は最初は大きく下がり(熱勾配が大),徐々に冷め方が緩やかになることが「理屈」で説明がつきます.
⇒ この「理屈」理解は,年齢に関係なく,観察力を重視すれば,小中学生でも大丈夫です.
このあとの展開
■ 以上の背景を踏まえて次のように式化していきます.
(1) y=f(x) の増減 ⇒ 接線の傾き:微分係数f’(a) の導入 ⇒ 導関数f’(x)
(2) y=f(x) の凹凸 ⇒f’(x) の変化に注目 ⇒ 第2次導関数f’’(x)
(3) コーヒーの冷め方 ⇒ 微分方程式立式へ
<補足>
■ 上述「コーヒー冷め方」についてです.
①②は,グラフを延長すると,直線y=20と交点を持ち,室温より下がる状況です.コーヒーの温度が室温より下がる?そんなワケはありません.
なお,本問は3択問としていますが,実は,正解として③の形しかないのです!
⇒ 減少関数,かつ,室温より下がることはできないカーブ ⇒ どうしたって③の形にならざるを得ませんね.これが,微分方程式の典型問となり,解として指数関数が登場する土台となっています.
■ 次回は,「7²+7²=98 からの学び」です(予定).無味乾燥な計算式にも意味が見え隠れします.
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