積分定数は “付録”か?

積分計算には,積分定数Cが付きもの.ただ,実際のところ,積分定数は”形式的存在”のイメージが強く,付録・お飾り といった印象かと.この際,再認識をしましょう.

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■ 高校教科書(数Ⅱ)を見る限り,積分定数の解説は実に淡泊であり,このような扱いだと積分定数は注目されないでしょう.

「答案には +C を忘れないこと!書かないと減点されます!」… 

と注意喚起される程度

正に,付録・付け足し ですね.

 

積分定数は “決定条件”なのです!

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■ 図は,点Pは地面からの高さがhm のところにあって,点Pからある物体を鉛直上方に初速度v₀m/sで投げ上げたとき,t秒後の物体の高さがyである 様子を示しています(物体への空気抵抗はないものします).

■ 結論ですが,yは t の関数として表されます.v₀, h が具体に与えられると,t秒後のyが計算で求まる! ワケです.

■ 確認します.時間t において

y …高さ,つまり,縦方向の位置座標を示す.

② y’…物体の速度Vを表す.つまり,V=y’ 

y”…物体の加速度αを表す.つまり, α=V’=(y’)’=y”

となります.

■ ①→②→③ は微分の流れ ですが

  ③→②→① は積分の流れ となります.

ここでは,① y を求めることがゴールですので,後者の積分計算をします.

仮に,h=20m, v₀=10m/s としましょう.

(1) 加速度 α

本問の場合,α=ーg となります.ここで,g:重力加速度で約9.8m/s²

⇒ α= y”= ー9.8

(2) 速度V

V=y’=∫y”dt  です.

⇒ V=y’=∫(ー9.8)dt= ー9.8t + C1 (C1:積分定数)

ここで,初速度v₀=10 ,つまり,t=0 のとき,V=10

よって,C1=10 

ゆえに,V=y’= ー9.8t +10

 これで積分定数C1の正体がハッキリしました.

初速度,つまり,重要な初期条件を示しているのです.

(3) 座標y

y=∫Vdt=∫y’dt です.

⇒ y=∫(ー9.8t+10)dt= ー4.9t² + 10t + C2 (C2:積分定数)

ここで,t=0 のとき,y=20m より,C2=20m

ゆえに,y= ー4.9t²+10t+20  

ようやくyをtの関数として表すことができました.

積分定数は「責任定数」!

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■ 例を挙げたモノの上方投げで,

①どのくらいの速度で投げるか(v₀)

②立ち位置がどれくらい高さなのか(h)

これらは,投石が生死に係わっていたであろう原始の時代から,投石の際は,向きとともに「必須・不可欠」要素だったことは間違いないでしょう.

※各要素の数値化はできないとしても,経験則を踏まえ何らかの手段で「伝授」を重ねていたはず.

■ この事実に立脚するとき,積分定数の軽視・ぞんざいな扱いは,まったくケシカランと感じています.

背景の一つに,「数学と物理の乖離」があります.特に,数学側の責任は大です.

<まとめ>

積分定数は,運動を式化する際,式を最終決定する重要条件です.最低,数学教科書でも記述されるべきです.積分定数ならぬ「責任定数」ですよ,あの +C !

 

<補足>

■ 次回テーマはあの有名な確率問題「モンティ・ホール」です(予定).ゆううつな問題ですね.

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