全国学テ”無解答” にフォーカス
「テスト≓ 点数」というイメージがすっかり定着しているような現状下ですが, 無解答 にも関心をもちたいもの.
誤答=無解答 ではありません.
■ ここでは現在,国内で実施されている種々の試験の中で,参加母集団が最大規模の全国学力・学習状況調査(以下,全国学テ)結果を基にして気付いた点を挙げます.
全国学テ結果 資料より
■ 毎年秋,国立教育政策研究所(国研)より,その春に実施された全国学テの調査結果が報告されます.
平均点,得点分布は当然として,種々の質問(※)など多角的な視点からの分析
※例「数学の勉強は大切と思いますか」「数学の公式を習うとき,その根拠を理解しようとしていますか」「週末は何をして過ごすことが多いですか」等々
■ その中で「無解答率」に注目しましょう.次は小6算数の例と報告書の一部です.
※ この例からも分かるように,学テにはいわゆる難問・奇問はありません.私見ですが,学力保証の色彩が濃く出ていると感じます.
報告書(一部) ↓
ピンク部分を拡大しますと
■ この3問をみてもわかるように,無解答率については,○県と全国との差が結構大きく,したがって,各都道府県間の違いも,左隣欄の平均点以上にありそうですね.実際,4倍前後の開きも散見できます.
問(1)について,○県の無解答率が0%は統計上驚異的で,超レアケースです.
無解答率 は語る
■ 採点業務に携わる際,全問無解答(白紙答案)は極端としても,各問ごと無解答の答案と出会ったときの心境は複雑です.
■ 誤答であればつまずきの箇所や原因を探ることも可です.カイゼンへのヒントも得られそうです.しかし,無解答からは何も見えません.
■ 出題者への不信・抗議のようなニュアンスもあるかも知れません.
特に,名と顔が分かる校内テストの場合は,一層気になりますね.
「無解答率が低い」は価値あること
■ したがって,「無解答率が低い」ことは歓迎するべきことなのです.
■ かつて阿部昇氏(現秋田大学名誉教授)は
国語,算数に限らず,いろいろな角度からアプローチする授業が多く,子どもの多様な意見を先生が意義付けながら,子どもたちに発見をもたらして,身に付けさせたい学力にもっていく学校や地域は,無解答率が低い
と述べています.
テスト監督者の指示でカイゼンするか?
■ 学校事務職員や民間経営者の研修会で,学テにおける「無解答率」を話題にしたところ,
テスト監督者が子どもたちに「必ず何か書くこと!無解答はだめ」とキチンと・厳しめに指示すればカイゼンするのではないか?
という主旨の声があり,また,賛同する空気も感じられました.
■ そこで逆にたずねました.
経営者の方におだずねします.出先の工場を視察した際,
何か要望や意見があったら,遠慮なく工場長に申し出てください
と言うと,翌日から申し出がドンドン増えるものですか?
■ また
○県など地方においては,そもそも子どもが素直なのではないか?したがって,言われたとおり行動するのであろう
という感想を述べた方がおりました.よく耳にする声です.
△県は○県と同様,地方にあって人口もさほど違いありません.しかし,無解答率に関して両者には結構な差があります.逆に首都圏にあっても,平均点・無解答率がよい水準の例も確認できます.
このように,人口の過多や立地環境だけで無解答率に係わる結果を論ずるのは正しくありません.
じゃあ どう考え・どうすればいいのか?
■ 無解答率カイゼンのための”王道“はありません.
前述の阿部昇氏の言葉どおりです.
無解答率の数値は,”ふだんの教室内空気“の反映と認識しましょう.
誤答やズレた答えを発しても
全面否定をしない・されない空気が教室に存在する
ことが本質です.
■ まずはリーダーたる先生の姿勢・言葉が決定的ですね.
「そうか~.ハッキリ言って正解ではないんだけど,すっごく大事な間違いをしてくれたんだよ.みんなも考えてみよう」
「ちょっと声が低かったね.もう1回言ってみて」
「みんな集中!今,□さんがつぶやいたんだけど,気になる意見なんだ.ハイ,□さん,みんなにも言ってみて」
■ 学校は,間違うところです.常にこの確認することを怠らないようにしたいもの.
※教室内空気の醸成は,「5月連休前」までが勝負です.
■ 逆の空気が支配しているクラスの子どもが,テストの回答中,少し分からなくなると「全部正解しないとバカにされる.だったら書かない!」と判断したとしても責められませんね.
■ 子どもを動物に例えるのは不適切でしょうが
馬を川に連れて行っても,馬が水を飲むかどうかは馬自身の判断である
ということわざは真理を突いています.
<補足>■ ○県を訪問したある視察団は,同県の無解答率の低さに絶句したという話もあります.ただ,裏の裏的解釈になりますが,世に出てから遭遇するであろう厳しい現実への「耐性」が備わるかどうか心配もしています.
■ 次回のテーマは「学習の進んだ子 part3」(予定)です.
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