極限値&”結婚”(←たとえ話です)
極限値の定義前段では,x→a とは,「xは限りなくaに近づく.ただし,x≠a である」としますが,この x=a を除外することに極限値の「神髄」があります.
この極限値について,昔²,教育実習で仲間のAikさんが(とっさに)披露したたとえ話は秀逸であり今でも強烈な印象が残っています.
まず復習:x≠a の確認
■ 平均の速さ(平均変化率)は分かりやすい式です.
ここでヒトの思考は平均の速さから瞬間の速さ へ進むワケですが,v式でx=a とすればよいと思いきや,ダメでした.
⇒ 数学の「禁じ手」 0÷0 (不定形)が登場するので
■ しかし,現実に「瞬間の速さ」を存在する量として認めないワケにはいきません.どうすれば x=a のジレンマから抜け出せるでしょう.
⇒ コーシー(1789~1857,フランス)は究極の値:x=a へのこだわりをアッサリと捨てて極限値の定義を産み出しました.つまり x=a は「不問扱い」ですね.
Aikさんが語った”たとえ話”
■ ところは教育大(現筑波大)附属駒場高2年のあるクラス.順により実習生Aikさんが授業担当で単元は微分の極限値です.
一通り解説が終わった後,Aikさんは生徒の表情を見て何を思ったか,突然,「結婚の定義」の話をし始めました.生徒の集中度が高まる様子が分かりました.
「この実習生,何言い出したんだ?」
■ 以下,Aikさんの話です.
・結婚の定義を「役所に婚姻届を提出する(≓受理される)」にしましょう.
・既に婚約済みのpとqがいます.
①pとqは婚姻届を提出するため市役所に向かいました.
②pとqは担当者から婚姻届の説明を受けました.
③pはペンを持ち氏名を書きました.
④続けてqもペンを持ち氏名を書きはじめようとしています.
観察者Xはここで場を離れなければならない事情が発生しました.
⑤Xは,qが 土壇場で婚姻届を破ったりすることはないのかと不安になり,振り返って様子を伺うと,qはペンで氏名を書いている途中でした.
⑥超心配性のXは,役所を出るまでカウンターの方をチラリチラリと見てそのつど安堵しながら出口に向かいます.
結局,婚姻届を提出する場面は確認することなく役所を後にしました.
■ ここでAikさんは次のように問いかけます.
Q ①~⑥までの事実を総合的に判断すると「婚姻届は提出された」,つまり定義に基づくと「pとqは結婚した」と言えるのではないか?
⇒ 確かに,qが最後の一文字を書く寸前で「やーめた!」とする可能性もありますが,観察人xは,最終文字の書き上げに向かって限りなく書き続けるqの姿勢は確認したと述べています.
A 婚姻届の提出・受理は不問にするが,全体状況から判断して届は提出されたと見なすことができる.したがって,pとqは結婚したと言える.
改めて極限値の定義を見なおす
■ 「xは x≠a としながら aにいくらでも接近するとき,f(x)はいくらでもbに接近する」という状況が数学的に示されたときは,f(x)は極限値bをもつとする.
限りない接近状況の確認 ⇒ 究極の値bを数として認める
例
■ x→a のとき,v→V となるとする.この際,
V:時刻x=a における瞬間の速さ
とするワケです.
<補足>
■ 次回テーマは「日常生活と論理」(予定)です.
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