カップの冷め方 ⇒ まず”観察”から

カップの冷め方は”あの分野“の典型例で、解法パターンに倣って忘れないうちに即、計算に…と走りがちです。しかし、ここはモノゴトについて観察力UPといきましょう。

下図は、コーヒーカップの温度変化を示しています。

最初は90℃であったのが、3分後に82℃となったとさ。

では、さらに3分後には何度になるでしょう?

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■ 本問は、高校生はもちろん、小学生から高齢者まで幅広い年代層に「問いかけ可能」です。

年齢に関係なくそこここの「反応」がありますが、やっぱり74℃が多いのです。

⇒ 主対象である高校・大学生の「観察力」が伸びていないということ

別の例を挙げます。

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■ 図で、ケースにビスが何本くらい入っているでしょう。

グループ学習によく登場する教材です。手順は

①数本のビスの合計の重さを測る(例:5本の重さが12g) 

②ケースだけの重さを測る(例:30g)

③ケース全体の重さを測る(例:750g)

①~③を総合して比例計算によりビスの本数(概数)を求めます。

⇒ 12÷5=2.4 (g/本)、(750-30)÷2.4=300(本)

■ 気配りのある数学リーダーなら、正解に一番近かったグループに「粗品」をプレゼントするなどして場を盛り上げたりします・・・

参観者の代表的な声:「どのグループも活発な話し合いをしていた」「子どもの表情から楽しく学び合っている様子が分かる」「ケース自体の重さに気づくグループが次第に多くなっていて、学び合いが深化していた」・・・

⇒ 言いにくいのですが、子どもたちの数理能力は高まっていない分析が甘い と考えます。

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■ 上記計算式は、各ビスが工業規格製品であって初めて成立する論理です。

江戸時代の和釘(大きさや重さがまちまち)では同じ論法は使えないでしょう。

変化 ≓ 比例 という思考パターンが、子どもはもちろん、数学リーダーにも「定着し過ぎ」です。

⇒ 発達段階にもよりますが、小学高学年以上であれば、単純比例計算ができない場合の確認をゼヒ取り上げたいもの。計算より意義ある思考とさえ考えます(「試験勉強を2倍すれば、点数も必ず2倍になるか?」と問われればさずがにyesとは言わないでしょう)。

■ カップの本題に戻ります。

82℃になったカップは3分後、どれくらいの温度になっているでしょうか?

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■ その下がり具合を表す適切な例を図の①~④の中から選んでください。

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■ ①②が×の理由:新たな熱源(ヒーターなど)はないので、温度が不変 or 上昇するワケがありません。

④が×の理由:本問で74℃と答えたヒトは④を選んだことでしょう。つまり、(単純)比例計算をしていることになります。が、「この調子」で論を進めるとどうなりますか?温度変化(熱勾配といいます)が右下がりの一直線状ということは・・・そうです、時間がたつとそのうち、氷点下の温度にもなりましょう

カップの冷め方は時間に比例しない(できない)のです。③が正解となります。

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■ 氷点下の温度と言いましたが、正しくは、「カップは室内温度(m℃)以下の温度にはなり得ない」ということです。

※「もし、直線的に温度が下がっていけば、カップが室内温度未満になってしまう、これはあり得ない!」という論法ですから、背理法を用いています。背理法は高校で扱いますが、内容は中学以下でも無意識に使用している論法といえます。

■ カップの温度を y とすると、yは時間 t の関数:y=f(t)となります。そのグラフのおおよその形状を描いてみましょう。

その際、y=f(t)のグラフの特徴は

(ア) 途切れない・・・温度が突然飛び下がったり空白(値なし)とはならない(連続性)

(イ) なめらか・・・温度は瞬間的に変化できない(微分可能)

(ウ) 減少関数・・・温度が横ばい or 上がることはない

(エ) カップ温度y・・・mを下回ることはない 

■ 以上のことに留意すると、y=f(t)のグラフはおおよそ次のようになります(ならざるを得ません)。

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■ 全体として下に凸形(型)の曲線になることが推測できますね。

⇒ この曲線を表す式を、指数関数といい、人口の増減、モノの販売量の増減など、量の増加・減少度についての数学的記述をする際、必ずといってよいほど登場します。

⇒ 具体には、微分方程式を立て、それを解くと指数関数がお目見します。

<補足>

■ 先日、実際にカップに熱湯を入れて、6分後の温度を測定し、微分方程式を解いた理論上の結果と比べてみました。後日、ご報告します。

■ 次回のテーマは「その説明、子どもに通じている?」です(予定)。

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