同様に確からしい って何?
「同様に確からしい」とは,確率の世界で「起こることがすべて平等に期待できることがら」を指す数学用語ですが,どことなく”不自然さ(ぎこちなさ)”を感じませんか.内容? 日本語自体?
■ 「同様に確からしい」は”equally probable” の訳でこれ以上の適切な表現はないかも知れません.
■ ただ,日常ではまずお目にかかることはない”業界用語”ですので,初見で出会う学習者(子ども)への配慮・気配り・ケアは必要です.
「同様に確からしい」例ですが…
■ 「同様に確からしい」ってどんな例があるの? と言われると
①サイコロの目の出方,②コイン投げで裏表の出方,③カードの引き方
などが挙げられるでしょう.もう少し厳しい目で見てみます.
ひねくれた見方ではありません
(1)サイコロ
■ 図のようなサイコロがあったとします.各目の出方の確率が一律1/6となるとは見えません.
(2)コイン
■ 数年前,カミさんが500円コイン貯金ケースを床上にまき散らしました.その際,1枚の500円玉が立って止まったそうです.
■ そこで”コイン立ち”を再現すべく500円コインを厚紙の上で約10cmの高さから落とし続けたところ,64回目に立ちました ↓
⇒ コイン投げで表裏の面が出る確率が「同様に確からしい」と断定できないワケです.
(3)カード
■ 次は,カードを引く場面です.
上図は先般実施されました最高裁判事の国民審査結果です.審査制度にケチを付けるつもりはありませんが,判事名と実績が分かって審査しているヒトは稀でしょう(そうでなかったらごめんなさい).
とすると,どの判事も「同様に確からしく」×印(罷免)を受けるはずで,数枚のカードから該当カードを選んで×印を付ける作業と同じです.しかし,今回に限らず毎回のように名簿1の判事が一番多く×印を付けられています.
⇒ 一見平等に見えるカード引きの場合も引かれやすい・引かれにくいヤツがいるのが実際です
「理想状態」での展開と見るべし
■ 以上のことから,確率計算の多くの場合,諸事象が「同様に確からしく起こる」ことを前提に,言い換えると,事象を「理想状態」に置いて論を展開していると言えましょう.
⇒ 世の中では「同様に確からしい」ケースは少数派!と考えた方がよいかも
例 たかがサイコロ、されど…
■ サイコロが金属やプラスチック等いろいろな材料(物質)で製作されている以上、完璧な製品とはなり得ません.100%均質な材料など存在しませんし,正六面体としての中心と重心を一致させることは不可能なのです.
⇒ したがって,いかに理想サイコロに近づけられるかが焦点になります
■ 下図は,入曽精密(埼玉県)で製作・販売している,超精密なチタン製サイコロの紹介です.
※ 数年前入手しました.ときおり付属の巾着(きんちゃく)袋から取り出して眺めては悦に入っています
■ 教科書や入試問題でのサイコロ扱いはどうなっているでしょう.
・次は,教科書(高校数学A)における記述です.ここでは「同様に~」の語句が見えます.しかし,他のページでは見当たりませんでした. いちいち断る必要もなかろう・・・という判断と推察します.他社の教科書も同様のようです.
・ 次に入試ですが,国主催の大学共通テストも含め,サイコロを扱う問で「どの目も同様に確からしく出る」と注釈を付けた例はほとんどなく,数少ない例を紹介します(問題文の一部).
理数センスを磨くには,「問い」が大切
■ 正解のない時代到来と言いながら,マークシート方式を導入し「学力=選択肢から正解を選ぶ力」 と進んで約半世紀(’79共通一次テストスタート).
遅まきながら,問題提起能力>問題解決能力 とする学びに変えねばなりません.
A県では以前から「問いを発する子どもの育成」に力点を置いていますが,国レベルの諸検査や大学入試がほぼマーク式になりつつある中,対応に苦慮しているようです.
⇒ 発せられた問いの内容の測り方が難しい.記述式なり口頭試問を課すことが基本になります.どう考えてもマーク式にはなじみません.解答選択肢に「正解」を入れたらナンセンスな調査になります.推理小説読み始めたところ,冒頭で「この5人の中から真犯人を捜してください」と宣言してしまうようなもの
■ サイコロの例ですが,各目の出方の確率が一律1/6とすることに疑問を持たせることなく論を進めることは可能でしょう.実際,大学入試問題自体がそのようなつくりになっていますので.
しかし,正確無比なサイコロとは何か?,製作することは可能なのか?,サイコロの目を彫るとき,目の大きさは同一なのか?等々の疑問や提案についてあれこれ思い悩むスタンスは、理数教育全体によい影響を与えると確信します.
⇒ 理科分野の例:斜面を滑り落ちる物体に関する問では,「斜面・物体の間に摩擦はないものとする」という注釈を付けての出題となります
⇒ ①摩擦を考慮するとどんな式になるのか ②必ず摩擦はある. すると,この問を解く意味はないのでは? 等々の意見や疑問が期待できます.これらが次の学びに繋がりますね
⇒ その点、算数・数学では当初から疑問を持たせることを避けて「問題のための問題」と解釈できる場面が多過ぎませんか!
数学=与えられた問題を解くこと
という図式を払拭しなければなりません
<補足>
■ 次回テーマは「命題:偽→偽 は真」(予定)です. 釈然としないが定義だと済ませてはいませんか.
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