「弧度って必ずπ(パイ)が付くんでしょ?」「・・・」
「弧度(法)って,必ずπが付くんでしょ?」は,実態の一断面を象徴するセリフです.少なからずの高校生・学生は弧度法が分かっていません.仮に「計算はできた」としても,です.
60分法との単なる単位換算であればこんな「悲惨」なことにはならなかったでしょうが.数学におけるユーウツ分野の筆頭格です.

■ つまるところ,弧度法は三角関数に微積分を導入する際の必須アイデアなのですが・・・
特に,sin2π/3=√3/2 等,「有名角棒暗記表の徹底」ルートをたどってきたヒトは,学びの学び方を勘違いしているので,上級学校での苦労は本人も指導者もタイヘン.
理工系専門科目のページを開くたびに三角関数(弧度法)が必ずと言ってよいほど登場します.
⇒ 有名角の関数値暗記しかやっていないaさんにとって,「θ≓0 のとき,θ≓sinθ であるから~」等々の解説が続くテキストは「鬼」でしかありません
単純な単位換算とならない弧度
■ 大谷選手の大リーグでの活躍もあって,投球スピード「100マイル/h≓161km/h」という換算がやや日常的になりました.つまり,1マイル=約1.61km という認識の定着です.

■ しかし,1(rad)=180/π≓57.3° という換算基準はどうでしょう?
① 両者の数値の差が大きすぎる
⇒ 何しろ 1(rad)が約57°ですので・・・
② 1周を360°とする基準は,(1年が365日であることからも合理性があり)世界中で定着している
③ 1周を2π(パイ):約6.28 とすると,小さい角量は表しにくく,日常生活には向きません
⇒ 例:10%勾配の道路標識が,0.174の角と表示されます!
④ そもそも「角度」は日常生活で使用される・認識される場面がほとんどないのです! 定規や巻き尺,温度計,時計,体重計などは家のどこかで見かけますが,分度器が居間にあったりしますか?
⇒ 角度は学校の教室内だけに存在する量であり,まして,弧度が日常で登場することはない!
⇒ 実際,「子どもの身長が150cmになった」「体重が70kgに増えた」の声はあっても「隣家の屋根は18°の勾配だ」は耳にしないし「あの角は3(約172°)です」などと弧度が日常で使用されることはまず100%ない
■ 以上のことから
弧度法は,60分法とともに角を示す表し方である.微積分等,数理を深める際に用いる必須の考え方・ツールである
という割り切り方でよいのではと考えます.
ちょっと面食らう?問題
■ 弧度を取り巻く状況を紹介してきましたが,入試問題等でも受験生の”痛いところ”を突く問いかけをたまに見かけます.出題側の意図(嘆き!に近い)がよく分かります.
Q1 次の図に直線:y=x のグラフを書き入れなさい.

Q2 次は,大学入試センター試験(’18 数ⅡB)からの問いです.

Q3 次は ’21 鹿児島大学の入試問題です.

※ 各問の答は,文末
■ ここで改めて弧度法の定義を確認しましょう(有名角棒暗記は「百害あって一利なし」ですよ!).
「角の数値化」を考える際,角自体の捉え方が長さや重さ等と比べて単純ではありません.まずそのことを押さえておきましょう.


※ 上記定義で∠AOBの対応先を弧長ではなく,弦ABとしてもよさそうですが,実は致命的な欠陥をもっています.弧長は∠AOBと比例しますが,弦の長さと∠AOBは比例しますか?
<弧度の実際>

■ 上述最後のまとめの続きですが,角→回転角→弧長→線分の長さ(実数)という一連の流れとなっています.
ここで,右の線分の長さ:θ から中心角θを想起できるか?ということが最大のヤマです ← 何しろ,線分が角!ですから.
したがって,関数 y=f(x) において,実数xを角とみなすこともできるワケです. x→y は「実数→実数」という対応ですから,微分積分が導入可能となります(三角関数の微積分).
⇒ 例:3といえば,{3m,3kg,3円,3L }etc の量を思いつくでしょうが,これからは,
3といえば,約172°(3rad)も仲間に入れてください.
<問の答え>
A1 直線y=xは 実数→実数 の関数であることから,1弧度 ⇒ 1(rad)≓57.3°であることに注意して点Q(1,1)と原点を通る直線を引けばよい.

A2 弧度法(1弧度)の定義そのもの.この種の問が日々の授業カイゼンに直結します!
②
※正答率は分かりません.本問のように出題意図の明確な問こそ大学入試センターが率先して正答率を公表すべきです.結局大手塾等の「自己採点集計に頼れ!」はどう考えてもおかしい(かつて別件でセンターに問い合わせしたが,門前払いだった記憶があります.当方,営利活動はしていないのですが).
A3

■ 点A,B,C からx軸に下ろした垂線の足をそれぞれD,E,F とすると
sin1= AD,sin2=BE,sin3=CF,cos1=OD
である.
図より,CF<OD<AD<BE と判断できるので(※)
sin3<cos1<sin1<sin2
※ 答のみの問であれば上のように「図で判断」でよい(グラフを用いる手もある).「記述式でヤレ」となれば次のようになりややメンドー.
π/4<1<π/3 かつ,y=sinθは第1象限で増加.∴ sinπ/4<sin1<sinπ/3 つまり,0.71<sin1<0.87・・・①
2<2π/3<5π/6<3 かつ,y=sinθは第2象限で減少.∴ sin3<sin5π/6<sin2π/3<sin2 つまり,sin3<0.5<0.87<sin2 ・・・②
π/4<1<π/3 かつ,y=cosθは第1象限で減少.∴ cosπ/3<cos1<cosπ/4 つまり,0.5<cos1<0.71 ・・・③
①~③より,sin3<cos1<sin1<sin2
<補足>
■ 次回テーマは「変化といえば,まず比例でやってみるか」(予定)です.
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