人口変動のグラフ観察
人口変動の要因は,自然増減と社会増減に大別できます.そして,前者は出生数と死亡数の差,後者は転入と転出の差で決まります.
言い換えれば,人口は「ヒトの移動」の結果ですから,雇用関係や家族・個人に関わる要因など,数多くの”きっかけ”が重なっての「総決算」というわけです.

■ したがって,人口変動について客観性ある予測等々は,その分野のプロに頼らざるを得ないと考えます.
■ しかし「サジを投げる」のも口惜しいことから,国勢調査に基づき,A県Y市の場合に限定し,ある期間内の人口変動から「その先の様子」が読めるかどうか試みます.
A県Y市国勢調査

■ 人口の増減を表すグラフは
①単調減少(y'<0)
②この15年ほど,その減少の下がり方がより顕著(y”<0)
であることが読み取れます.
※ A県全体も同様の傾向が見られ,同県の悩みは深刻です.
■ 下表とグラフ(散布図)は,Y市の過去50年間11回にわたる国勢調査の結果を●●で示し,また,●点P1,P3 はそれぞれ70年,80年実施の結果を表しています.

ここで,70年→80年 の人口減少率をm1 とすれば
m1=(65532-68621)/10=-308.9(人/年)
であり,m1は直線P1P2の傾きを示しています.
そこで,直線P1P2 の方程式を y = f(t) とおくと( t:国勢調査実施年)
y - 68621=-308.9(t-1970)
よって,y=f(t)=68621- 308.9(t-1970)
=-308.9t+677154 ・・・①
すると,f(1985)≓63988, f(1990)≓62443, f(1995)≓60899 となり,実際の人口とほぼほぼ近い数となっています.しかし,2000年以後となるとグラフのようにズレが大きくなっていきます.

つまり,①の主張は,曲線を一次関数,すなわち,変化を直線で近似して値を予測しようというのですが,「限界」もあり得るワケです.
■ これまで述べてきたように,数値の予測には,直線の傾きm1 の値が決定的な役割を果たしています.
そこで,変化の様子をできるだけ実際の値に近づけようと考えます.
たとえば,80年~90年間と,90年~00年間の傾きをそれぞれm2,m3 として,それらの平均をm4 とします.つまり
m4=(m2+m3)/2
です.実際,計算すると m4=-351.4(人/年) となり,基準年が80年ですから
y=f(t)=65532- 351.4(t-1980)
=-351.4t+761304 ・・・②
①と比して予測値の精度が「多少」上がる結果となります(後述).
■ 指数関数を用いる近似式(マルサスの人口モデル)
18c末,人口等の増減を記述するモデルをマルサス(イングランド)が示しました.そのideaでは指数関数が主役を演じます.

■ ①②③’を基に,Y市国勢調査を比較してみます.

グラフから分かるように,05年以降の予想値と実際との「ズレ」は,マルサスモデルをもってしても説明できないほど,Y市も含めたA県の人口減少の深刻さが浮き彫りになっています.

■ なお,excelには強力なツールが備わっております.

上図は,Y市国勢調査散布図から(たぶん)最小二乗法に基づいて一次関数による近似・予測をしたものですが,予測直線(点線)から実際の数(青点)が次第に離れていく様子が読み取れます.なお,指数関数を用いた方法も選択できますが,③とほぼ同じ程度の精度でした.
<補足>
■ 昨今のA県人口は「ただならぬ」減少ぶりで「異様さ」さえ感じます.
本テーマの出発点は,教育行政に勤務していたとき,生徒数減に伴う高校の統廃合計画に関わったことがあり,その際「この先5年間の各校ごと生徒数を予測せよ」という指示を受けたところにあります.つまり,人口減下の学校規模モデルを作れ!(しかも短期間内で,かつ,一人で)ということ.高校新増設も苦労が多いのですが,縮小・廃止となると各方面からの恨みはあってもそれ以外は何もありません.
人口増減についてにわか勉強を始めましたが,本来業務との兼務ということもあり,手に負えないことがすぐ理解できました.ただ指示する方も「カンタン」に考えている節が見えましたので,開き直って,直近3年間の各高校入学者数と,地区ごと中学生徒数と小学校高学年児童数をベースに「一次関数」を用いた式,つまり,比例計算で各高校への入学者予想数値を出したワケです.結果は概ね妥当な範囲内に収まりました.※表計算ソフトが出始めた頃で助かりました.
■ 本テーマでは,一次関数と指数関数を用いました.入試のためだけの数学から脱却・克服を!
■ 次回テーマは「問題の観察」(予定)です.数学=問題解きではないのですが・・・
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