問題リード文のじっくり「観察」
学校事情や個人にもよるでしょうが,数学(算数含む)の学び ≓ 問題を解く という等式が成り立っているように感じます.この延長線上には「○がもらえたので数学が好き」という児童の声がありそうです.

■ つまり,数学特有の思考や論理に価値を見出すことよりも「テスト結果」に重きを置く(置いてしまう)姿勢です.
⇒ 数学科に進学した少なからずの学生が受ける「数学ショック」の主因と考えます.物理や化学などでも専攻者に同種ショックはあるものでしょうか?
■ そこで,数学を学ぶ児童生徒にとって「問題解き」がそんなに重要であるならば,逆に問題自体をじっくり観察することで,思考力upに繋げられる場面もあるのではないかと考えた次第です.

Q1 次の問について思うところを述べなさい(解く必要はありません).
「問 図のような円筒形のタンクに水が満タンに入っており,底の穴から毎秒0.8Lの水が流出している.タンクが空になるまでの時間を求めなさい.」
別の例.斜面を物体が滑り落ちる問(物理)では,「なお,物体と斜面の間に摩擦はないとする」,また,物体の自然落下の問では「空気抵抗は考えなくてもよい」といった注釈が付くのが普通.
⇒ 数学の問題解きに「慣れている・染まっている」ヒトからすれば,これらの注釈は不要で,まどろっこしい印象をもつ向きもあるかも知れません・・・「問題が成り立つ理想状態下で解くのがフツーだろう.念押しのような注釈は要らない!」「数学は,必要最小文字数のリード文で題意を示す.物理は長~いネ」
A1 問のリード文「・・・底の穴から毎秒0.8Lの水が流出している」に大いなる疑問があります.

① 水の流出する様子:最初は猛烈に流れ出し,次第に弱まり,最後はチョロチョロと流れ出る・・・これが水圧を考慮した光景です.高さのあるタンクですから,水圧は一定ではありません.
② もし,リード文にあるように流出量が毎秒0.8Lの一定量であるとすれば,そのための大仕掛けな制御装置の設置が必要です← 本末転倒!
③ リード文を「・・・毎秒0.8Lの水が流出しているものとする」とすれば多少のカイゼンにはなりますが,身近な科学現象の観察力育成に逆行する「愚問」であることは変わりません.
■ 本問に関して,流出速度v は,v=√2gh (g: 重力加速度,h: 水面までの高さ)① となります(トリチェリの定理).①をベースにして微分方程式を解くことで流出時間が計算できます(流出口を半径5cmの円筒形とすると,約65秒).
■ リード文の記述に細かい条件はまだまだ挙げられます.水面の高さによる重力gのごく微少な違い,水とタンク間の粘性等々です.解答者の年齢や発達段階を踏まえ,問いの主旨を活かせる適当なレベルで出題することになりますが,本問リード文は許容範囲を超えた出題ミスになると考えます.

Q2 次の問について思うところを述べなさい.
「問 図のように,バス停Pから乗車してQに着いた.時速40kmでt時間かかったとするとき,PQ間の距離を求めなさい.」
A2 問の説明図,さらに本文にも疑問があります.
図や表とは,現象から枝葉末節部分を捨てて本質を分かりやすく伝える役目がありますが,本問の図はどうでしょうか?
もちろん正解は40t (km)で,”図の黄色の長方形の面積に相当する” という説明が一般性(距離が面積で表せる!という典型例)をもつワケですが・・・
① 図をソノママ受け取って解釈すると,その乗客はバス停Pで時速40kmで走るバスに飛び乗ったことになる ⇒ あり得ない!
② したがって,時速40km は平均時速40km とすべきで,図(グラフ)も変わる

■ 現象を正しく観察 → 図で表す → 式化 という一連の流れが重要です.
本問では,平均時速を確認後に,「点PをP’,QをQ’ に移すという考えを基にして,距離は40t となる」という手順・説明になりましょう.
■ なお,本問の場合,導入で「バス停Pから平均時速40kmのバスに乗り,3時間かかってQで降りました.横軸を時間軸t,縦軸を速度軸v とすると,どんなグラフができますか?」という問いかけで,まず運動の全体イメージを確認させる手も効果的と思います.
⇒ 結構な数のヒト(学生も含め)が,冒頭のような長方形の図を描くのでは?
<補足>
■ 次回テーマは「入れ子式の式に戸惑う」(予定)です.
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