’25大学共通テスト数ⅠA第3問(五面体)
今日,大学受験と言えば,共通テストを想起するヒトが多いことでしょう.
※ 共通テスト・・・実施主体:大学入試センター,出題形式:マークシート方式(以下,マーク式)

■ そんな中,共通テスト数学は,他教科のような単純な選択ではなく,正解となる数値をマークする方法が大半
したがって,作問担当者は,出題の意図を踏まえた「適切な問いかけ」にかなりの神経を尖らせていることと察します.
ここでは,’25大学共通テスト数ⅠA第3問(五面体)を話題にします.
↓



(以下略)
解説の「解説」
(1),(2)の順を変えます.
Ⅰ (2)について
■ 立体図形の中で方べきの定理を「適用・活用」できるかどうかを見る問いで,受験生や関係者の意表を突いた感じです.

実際,五面体は3次元図形ですが,△PAB, △PEDは平面,つまり2次元図形ですから円が絡んだ相似形であれば方べきの定理が適用できそう.
しかし,3次元図形である五面体を見取図で見て,その中から2次元である相似形を抜き出して論を進めることはそんなにラクではないのです.
⇒ ただし,問題文に相似であると書いているので,仮にナットクしていなくとも計算は進められる ← マーク式誘導では真の学力が測れない一例
■ 立体図形と平面図形の境界に焦点を合わせた出題であり,また,問題成立上,(2)で与えられた各辺の数値は実に巧妙です.
■ 最後の(ⅲ)命題の真偽判定の問は,ほぼほぼ真の学力が測ることが可能であり,マーク式にふさわしい出題であると考えます.
Ⅱ (1)について
設問文を一部再掲します.
↓

■ ※下線部に注目しましょう.
本問(2)は「点Pが交線上に存在する」ことを前提とする設問なのです.
⇒ つまり,図で表すと次の2主張の確認となります.

⇒ 任意の四面体をある平面πで切断すると,五面体ができる
これはナットクですね.逆はどうでしょう?

(注)※「任意の五面体」とは「3直線DA,EB,FCのうち,どの2直線も上方で交わるような五面体」という意味
■ 一つ目の主張は当然だろうとしても,二つ目の主張についてはいかがですか.少し「意外な」感じがしませんか?
論理的思考力が測れるのは(1),(2)のどっち?
■ 問(1)※下線部:「~点Pは直線CF上にもある」が本問全体を通して核心部分であり,思考力が求められる内容(→ 思考力の測定)と考えます.比して問(2)は方べきの定理の活用力(→ 計算力の測定)を問う内容といえます.
そこで,問(1)の核心部分について,問本文ではその証明のため,受験生自ら「確認・ナットク」するべく,誘導のカタチで論が進められます.

■ ※下線部:「点Pは直線CF上にもある」ことの理由として本文で
「平面ア(ACFD)と平面イ(BCFE)との交線は直線CF であるから」
と述べています.
■ このマーク式誘導に異議を申し立てたいと思います.
①自らの思考を深めようとする間もなく,突然,平面ア,平面イが登場する.
②「平面ア(ACFD)と平面イ(BCFE)との交線は直線CF である」ならば,なぜ「点Pは直線CF上にもある」となるのか? 記述式ならば,一番確認したい箇所.

⇒ (1)問題リード文の解説の「解説」
・点Pは,平面ア(ACFD)かつ平面イ(BCFE)上の交点
・交点は交線CF上の一点(←交線は交点の集まりともいえる.実際,交点が交線外にあるような2平面は存在不可)
・したがって,点Pは直線CF上にある.
■ 以上まとめると
① 五面体についての本問はマーク式テストとして創意工夫がなされている
② と同時に,マーク式テストの限界を示している.マーク式で真の思考力を測ること・育成することは極めて困難である
⇒ 数学の課題に対して解決への第一歩をどの方向に定めるか?この判断(試行錯誤や思考)が最も肝心なところ.しかし,マーク式は親切にも即,誘導してくれる.考えなくともよい.
換言すれば,「出題側の意図に沿う思考」が最も重要視され,学校における日々の学びの在り方に,深く,静かに影響を与え続けている.
(2)の解・・・記述式解答例
■ 本問(1)を記述式にすれば次のような解答もあり得るでしょう.
(1)

(解)
・・・(前半部分略)・・・
図で上部「錐」は6辺が決まっていることから三角錐P-ABCが定まる.
ここで.①△PACと△PBCはそれぞれ平面(の一部)であり,直線PCはそれら2平面の折れ線(交線)である.
また,②△PACと△PBCはそれぞれ平面PDFとPEF上にある.直線PFはそれら2平面の折れ線(交線)である.
①,②から直線PCと直線PFは同一交線であることがわかる.よって,3点P,C,F は一直線上にある.
■ 解答について本文例と上記例はほぼ同値の内容となりますが,本文例は交点と交線について,上記例は2交線についての説明が「要」となります.
<補足>
■ 坂口志文博士,北川進博士のノーベル生理学・医学賞,化学賞受賞に関連して.両氏は①公立高校出身で,かつ,②マークシート試験以前の世代の方です.これまでの自然科学系受賞者27名中,①:有名私学出身者は江崎玲於奈氏と野依良治氏の2名のみ(今後出る?),②:共通一次導入後,つまり’25現在で(72+α)歳以下の受賞者は,梶田隆章氏のみです.研究実績評価の定まった高年受賞者が多くなる傾向があるとは言え,近年,世界的には60歳代受賞者も増加しています.
骨の髄まで染みこんだマーク式システム適応教育が,日本人から重要な能力を削いできたのではないかと感じている昨今です.
■ 次回テーマは「理想と実際」(予定)です.算数や数学で取上げられる教材は「理想」状態でのセットが多いですね.しかし,実際に場面設定してみるとケッコウ大変・・・.
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