それって,題意の「伝達」ですね
中学校・高校では,進度のこともあり,ある日の授業が例題や演習の「問題解き」で終始することもママあります.その際,問の題意へのアプローチの仕方に注目しましょう.
その冒頭(導入)で,たとえば

「この問は前回取り上げた例題の続きで,直角三角形でないとき,解はどうなるか?という意味です」
(以下略)
などと,本問の言わんとする主張(題意)を補足説明することも多いかと.
つまり,題意の「伝達」ですね.
こうした場合,正解へのショートカット,すなわち,「こうすれば巧くいく」という「How to ~」で終始しがちです.
かつて遭遇した例が次です.
×稚拙な導入・展開
- 長さ20mのロープがあります.このロープで長方形を作るとき,面積が最大となるときの長方形とそのときの面積を求めなさい.

<ある「導入&展開」>
・今日は教科書10ページの例題からですね.まず,題意を読み取ってください.
・比較的楽ですよね.まず,縦辺の長さを xmとします.すると横の辺の長さはどう表せますか?
・今日は8日だから出席番号8番の△君,どう?
20-x ですか?
・よく考えたかな.18番の○さん,どうですか?そう,10-xだよね.
・面積をyとすると,y=x(10-x)となります.最大値を求めよということだからxの変域を押さえる必要がありますね.
・28番の□君,答えてください.
-----(以下略)-----
×としたい箇所はたくさんあります.
① 導入を教科書ページで指示しています.今どき”?”という感じですね.安直!
② 進め方のパターンが「発問→指名」の単一形.また,出席番号順の指名も,今どき”?”です.
③ 誤答した△君へのフォローがない.数学が嫌いになる一因をこの先生は作ったかも知れません.
まだまだありますが,最大の「×」は,
④ この例題(教材)がもつ意味・意義を深掘りしておらず,教材のよさを活かしていないという点です.以下の展開と比較してください.
<こんな展開はどう?>

・ これは,ロープの輪っかで長さは20mです.巨人がいて,この中に左右2本 の指を入れてピンと張ると長方形ができますね.
指を動かすと,長方形もいろいろ変わります.
・ ロープの周の長さは20mで一定です.ここで何か数学の問題ができませんか?
面積? なるほど.それでいきましょうか.
・暗算でいいかな.縦の長さが3mのとき,面積はいくらになる?はい,21m²で正解だね.じゃ,縦の長さが6mではどうですか?
(中略)
・ ところで,計算はさておいて,この例題全体をとおして何か感想とか疑問はないですか?
A君,何か言いたそうだね.なるほど,面白いこと言うね.みんなに聞こえるようにもう1回言って.
皆さん,聞いた?.周の長さが20mと一定値なのに面積が変わるのか,と思ったそうだ.
← この種の声を引き出せるかどうかが大きなポイントになります.自発的に出ることがベスト(自由な声が出せるような空気感がふだんから教室内にあるかどうか).
しかし,この構築は至難の業です.
なお,近年,グループ協議を取り入れ意見や声を求める展開が盛んですが,あらかじめ指導者・子ども双方にプログラムされているような「出来レース」も散見されますので残念!
■ A君の疑問は貴重です.大いに活かしましょう.以下のような進め方はどうでしょうか.
・ さきほど計算したように,長方形の形で面積が違いましたね.面積はどこまで小さくなれますか?
(中略 ← 限りなく0に近づく)
・ ということで,「どんな長方形が最大面積をとるか?」という問いができるわけです.
・ 最大値を予想してください.25m²ですか.あちこちから同じ答えが出てきました.つまり正方形のとき最大値となるということですね.当たっているようだけど,キチンと理由を述べていきましょう.

← 多くの場合,生徒は辺の長さを整数値として何例かを比較計算して,直感的に正方形にたどり着きます(目は格子点にのみ集中!).
下図で,Sのような点は本当にないのか?疑問を持たせたいものです.

← そこで,文字xを用いざるを得ない状況に追い込むことで,文字使用の必要性・よさを再確認できる.Y=x(10-x) のグラフは上に凸の2次関数(放物線)であり,Sのような特別な点は存在しない.

■ 学習の進んでいる生徒たちには,定理「関数 f(x) が閉区間で連続ならば,f(x) はその閉区間で最大値・最小値をとる」を紹介することも意義があります(← 存在定理の一例として).
■ また,囲む図形を四角形から五角形,六角形と増やしていくことで,最大面積となる形を推測させることも可能となります.(← 周の長さ一定の閉曲線で囲まれた部分が最大面積を持つとき,その形は何か?)
■ 上記の授業を見る限り,前述「稚拙」先生は,授業展開面も稚拙であるだけでなく,教材自体を「高校数学の流れの中」で位置づけていませんね.
つまり,終始,問題のための問題という単発扱いをしています.残念!
<補足>
■ 指導者自身の「教材の読みの深さ」は子どもには「分かってしまう」「バレる」ものと覚悟すべきです.相手が小学校低学年(幼児も含む)であっても,です.その際,本質的なことは「読みの深さ」の程度ではなく,指導者の「学ぶ姿勢」の有無でしょう.
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