「角」を測るって、どういうこと?――弧度法の原点に立つ(その2)
高校生・大学生に「sin1とsin2はどっちが大きい?」とサラリと問いたずねて見てください.ケッコウ厳しい結果になりませんか?
同レベルの下の問はいかがでしょう.

■ 少なからずの高校生が「有名角三角関数値表」の丸暗記作業に走り,そばに立つ数学リーダーは「とにかく,三角関数値がスッと出てこないことには話にならない!」との姿勢です.
⇒ 論理の数学が年号暗記「火縄く(1789)すぶるフランス革命」と同列とは!
■ 高校生にとって,入試対策だけでなく,将来,理・工・情報・経済等を学ぶ上で三角関数を「自由自在に使いこなす」力量は必須です.が,現状は厳しく,特に,弧度法の理解が「貧弱」です.
少なからずの高校生・大学生は 弧度法を真に身に付けていません.
前回に続いて,克・弧度法 に向けて話を進めます.
「回転量」としての角

■ 前回(その1)の確認です
<上図> 小3で2辺に挟まれた図形としての角からスタートします.頂点や辺と比べてつかみ所がない感じかと
<下図>小4で角とは,辺(直線)を,端点を中心に回転してできた形として扱う
角の大きさをどう測る?(どう決める?)
■ 角の大きさの測り方(決め方)
(1) 上図(小3)の場合・・・角の大きさをダイレクトに分度器で測る(読み取る)
⇒ 分度器の目盛りで示される角度数値は,通常,0°~180°の1°きざみ.関数の変数にするにはムリがありそう
(2) 下図(小4)の場合・・・角とは,辺を回転してできた図形と見なす(分度器を用いれば,(1)と同じ角の大きさが読み取れる).そして,角の大きさとは辺の回転量と解釈できる.すると,回転量を「有益な関数(※)」の変数として扱うことが期待できる(※三角関数のこと)
■ そこで,回転量 についてもう少し突っ込んでみましょう.

■ 以上まとめると
中心O, 半径r の円において,半径OP(動径という)をOを中心に反時計回り(正の向き)に回転して半径OQになるとき,回転量(θ)を∠POQの大きさとする(時計回りの場合は,-θ ).
その回転量を定める際,辺の大きさに制限はないワケで,一律に同じ長さ:r としてよい,つまり,回転量として扱う図形を「半径r の円」に限定できます.
さらに,すべての円は相似形であることから,今後,r = 1 (単位円という)として論を進めることが次第に多くなります.
■ 以上のことから,つかみどころの難しかった角の大きさ : θ とは,「動径の回転量とする」となりました.
次は,その回転量をどう「数量化」するか?ということになります.
上図で,θという回転量を決定づける「有益な変数」として,例えば,弦PQ の大きさはどうですか?
つまり,弦PQが決まるとθがピシャリと決まりませんか? 図からは,弦PQ ⇔ θ という対応が見えるのですが・・・
Q2 弦PQの大きさは,回転量:θ の決定には適当でないことを説明しなさい.

A2 図1において,ある変数を定めることで,回転量の数量化を図ろうとする際,①大小関係の成立,②比例関係の成立 は最低限必要な条件です.
回転量 を 弦PQの大きさ としたとき
①大小関係・・・OKです
(∵) 実際,θ,θ’ に対応する弦の大きさをL1 , L2 とすると,明らかに,「θ<θ’ ⇔ L1 <L2 」となります.
②比例関係・・・成り立ちません
(∵) 例えば,基本的な「弦の大きさが2倍になれば,回転量も2倍になる」も成り立ちません.
図1で,∠POR=2θ であり,対応する弦はPR ですが,図より明らかに,PR<PQ+QR=2θ となり,回転量は2θ より小さくなります.よって,比例関係は成り立ちません.
■ では,角すなわち回転量を表すふさわしい”数学的要素”を図1で探してみましょう.考えるヒントはQ2 にあります.比例関係の維持が必須でした.
図1で,中心角∠POQの大きさ は 弧長PQと比例します(これは使える!)
角の大きさ:θ を弧長で表す

■ 図2の補助説明
単位円で話を進めます.「∠POQ に 弧PQ が対応している」と読んでもよいのですが,
むしろ
・「弧PQに,∠POQ が対応している」と読む(弧が決まるとそれに見合う角も決まる!).
・弧長PQ=∠POQ=θ と書く(弧長:弧PQの長さ)
つまり,弧長は弧の長さ と 角の大きさを表す とします(弧度法とはよいネーミング)
■ 単位円で,弧長:θ = 1 の場合はかなり特別なケースです.実際にθを求めることができます.
①弧長:半周の大きさのとき,θ=180°
②弧長が半周のとき,その長さは 2π(パイ)r/2 =πr=π(∵単位円)
③以上のことから,
π(パイ)=180° つまり, 1=180/3.14159・・・≓57.3°
(また,2≓ 115°, 3≓ 172°・・・)

■ 「弧長を角と見なす」ことに何らかのこだわりがあったのか,弧長にrad(ラジアン)という単位を付けて,1 rad≓57.3° などと書き,途中で「radは省く」というルールを設けたりしていますが,かえって混乱を招いている面もないわけではありません.
ここでは「弧長=角」というシンプル原理で押すべきかと考えます.
その際は,弧度法を示した上の半円図とともに理解を浸透させたいものです.
特に,π(パイ)=180°,3≓172°(180°弱でも可),1≓57°(60°弱でも可)
弧度法は60分法に比べてなぜ浸透しないのか?
■ (その1)でも触れましたが,60分法でも日常生活で角自体に触れる機会はまずない.ましてや弧度法は・・・
大谷選手の活躍もあって,1マイル≓1.61 km という単位換算ができつつありますが,1≓57.3° という換算結果は2数値が離れすぎている.実際,「この斜面の角は0.52 です」などと言われても・・・(0.52≓π/6=30°).
60分法の元は360の約数が多いという背景があったようです(1年の365は約数がそんなに多くない).
しかし,理工学の計算には,三角関数の微積分が不可欠であり,その際,60分法では対応できません.覚悟して弧度法を味方に付けましょう.
■ 3という数から連想される量はどんなものがありますか?
{3円,3m,3km,3kg,3年・・・}
足りません!これからは 3(約172°)を仲間に入れましょう!
<補足>
■ 「鬼門」三角関数は.相似比一定をベースにした小中高を貫く格好の学びです.
■ 次回は「数学用語アレルギー」です(予定)
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