学習の進んだ子ども(その3) 1~1000まで書き続けた小1生
算数・数学教育に関わって「学習の進んだ子ども」さんとどう向き合っていくか,はテーマの一つになります.基本的には,大歓迎で”喜び・驚き”です.時には”戸惑う”こともありますが.
「学習の進んだ子ども」の定義として,”難問が解ける”が一般的には通用しそうですが,もっと広角で見てみましょう.
1 から 1000まで書き続けた小1生

■ 詳しい経緯は後述しますが,学校で10進位取り記数法を習ったばかりのaさん(当時,小1生)の紹介です.
aさんは
位取りルールを守ればいくらでも数えることができるんだ
1000までだって数えられるんだ
とやや興奮しながら帰宅しました.そして,意を決して1000に向かってノートに数を書き始めたのです.最後までやりきれるかどうかは不安なママで.
どのぐらい時間がかかったのか,途中でやめようと思わなかったのか等々の心中は不明ですが,とにかく最後1000までやり切りました.
■ 小1では,1~100 までの数を習います.親とフロに入った幼児が100まで数える光景の延長ですね.
{ 0,1,2,…,9 }までの10ヶの数で,すべての自然数を表すことができる!
これが10進法の神髄ですね.ヒトが数千年かけて得た知恵&財産です.
特に,「0の発見」が決定的でした.
⇒ ローマ数字(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ…)や和数字(一,二,三…)には0がなかったので 例えば, 20230115×1234 を書き表し計算することは実質ムリ
aさんのすごいところ
■ 345 は 3・10²+4・10¹+5・1 の意味です.この10進位取り記数法の原理・ルールを小1のaさんが理解した上で,1000までの数を書いたのではないと思います.
それでも何とか自分なりにルールを解釈しながらゴールしました.すごい!
<aさんの心中>・・・勝手な想像ですが
・先生はどんな数でも書けるっていったけど,ホントに1000までの数が書けるのかな?書けなくなったらどうしよう.

・9の次の数をなぜ10にするんだ?
・19の次は,191じゃなくて20とするのか!
・0って何もないって習ったけど,「0」って書くんだ…そういうルールなんだ
・99の次は100.すると199の次は200か
・・・・・
■ 見ていたわけではありませんが,aさんは1人で黙々と「何か」と格闘しました.相手はルールの確認でしょうね.
実は aさんは・・・
■ 先だって「第10回算数・数学の自由研究作品コンクール」(理数教育研究所主催)表彰の集いが東京市ヶ谷アルカディアで開催されました.

■ 審査委員長の根上生也氏(横浜国大名誉教授)が審査経緯の概要を説明いたしました.
全国各地域ごと,各段階を経て最終審査まで辿り着いた優れた作品に,固定された評価尺度はないが,子どもの言葉で綴られているか,読み手の心に響くものかどうかなどが決め手になっている.
■ このように氏は
各審査員は,作品について単なる問題解きで終始せず,正に自由研究たる「自由」を根底に据えて審査しているという趣旨を熱く語ったのです(⇒例年どおり「ノー原稿」スタイルで).
その延長で,つい口にしてしまったのが小1生aさんの紹介でした.あいさつの終わりに「a=自身」であることをやや遠慮しながら明かしておりました.
■ 会場内にいた者の1人として,「空気」が適正に伝わることを願っていますが,この際,小1生aさんが氏であったということよりも,「1000まで書き続けた小学生がいた」という事実がズシンと響きました.
未知のことに対する姿勢・挑戦力・忍耐力,そして,よい意味での頑固さ…これらは,aさんの思考を支える土台であり,aさんのノートは私たちに学ぶべき「学び方」を示しております.
学び・学び方は,年齢や時代を超越するものですね.
<補足>
■ 次回のテーマは「極限値の定義」(予定)です.何をいまさら・・・と言わず確認しましょう.
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