数学用語アレルギー(1)

何気なく使用している数学の用語,けっこう恨みを買っているようです.

有理数:有利じゃないんだ.:割算が商いにカンケーあるのかな.奇数:奇って普通じゃないことでしょう!.かさ:小2で分かるの?傘じゃないよ.

今回のテーマの背景:学習者の中には,数学用語自体に疑問や抵抗感,あるいは反発心を持つ人もいます.さて,どうしましょうか.自戒も込めて設定しました.

補足説明が 一言 ほしい用語

1 有理数・無理数(中3)

09 20200520有理数def

明治の時代,英語表記 rational-number,irrational number に,どういう漢字を当てるべきか(翻訳)するべきか,の検討がなされました.

語源を探ると,rational ← ratio(比) ← rate(比率,レート) です.

ところで,分数b/aは,b:a という比の意味をも表しています.

そこで,rational number:比が有る数→有比数 という案もあったようです.

これならシンプルで納得のいく説明になります.しかし,当時の判断で,最終的には,有理数と翻訳されました(当然,相応の理由があってのこと).

が,私見です,誤訳とは言えないまでも,適訳ではなかったと考えます.

特に,無理数がよろしくないです.通常使用されている意味での”無理”が,マイナスイメージを想起させていますね.

前例もありますので(方程式の”解”は,かつて”根”と称していた),いずれの日か,有比数,無比数に変わることを期待しています.

2 かさ(小2)

意味:体積,容積,高さ,大きさ,分量のこと.漢字では  と書きます.

日常語でもときおり使用されます.「かさばる」,「年かさの友人」など

洪水のシーズンですが,「水かさが増しています」というニュースも耳にしますね.

さて,この言葉と意味を,小2の子どもにどう伝えましょう.

<私案>

① 漢字の「嵩」を書き,読みと意味(大きさ,高さの二つ程度)を伝える.

② 「かさばる」「水かさがます」などの言い方も押さえる.

③算数で使するときは,「大きさ」と言い換えても通じることを伝える.

<留意点>

①こういった用語にも「疑問」を持たせたいもの.できれば,自主的な調べ学習につなげたい.

②難しい漢字を示すことに抵抗感を抱く方もいるでしょうが,意外と子どもは柔軟です.また,突然「かさ」と示され,それだけで進められるよりはベターと考えますが,いかがでしょう.学習の進んだ子どもへの視点も必要です.   

3 定積分・不定積分(高2,3)

この定積分と不定積分ですが,実というと,生徒たちからはそんなに「苦情」は上がっていないのです.つまり,アレルギー反応は起こしていないのです.

が,微積分の計算自体は分数の復習のような側面もあって,答えが合うとそれでよしとする傾向がなきにしもあらずです.疑問が気づかないままになっているケースも多々あると見ております.

主因は, ∫ (インテグラル)が素晴らしい記号だからです.換言すれば,積分の原理があいまいでも,記号が積分計算だけは進めてくれるのです.

 

 

09 20200521数学用語

 

 

 

 

分数,分母,分子実に分かりやすい翻訳例

 

 

← ratio には,比のほかに,理性という意味もあり,そちらを尊重したという説

 

 

 

 

 

 

 

   か  さ

09 20200523かさ

 

 

 

   

← 生活年齢からしてもう少し語彙語句が多くなってからでも遅くない気がします(例:「水かさが増しています」などの言い方に慣れるころ).その間は,「大きさ」等で代用可能と考えます.

09 20200525ポップ文字例

09 20200527原始関数
09 20200527微積基本定理1
09 20200527微積基本定理2

微分法の逆演算が面積と関係をもつというのは,何とも不思議なことではないでしょうか.

■ その核心の部分は,「微積分の基本定理」にあります.ここを外すと,単なる計算だけの微積に成り下がってしまいます.

■ 微分と積分,起源はどうなっているでしょうか?もちろん,学校では微分を先に取り上げますが.

  積分の起源がはるかに昔です.2000年以上前(紀元前),ギリシアのアルキメデスは今日で言う区分求積法のアイデアで円周率や円の面積公式等を作り上げました.17世紀になりニュートン,ライプニッツにより微分積分学として発明・構築されました.なお,ライプニッツの用いた記号が今日まで使用されています.

4 同様に確からしい(中2)

equally probable の直訳ですが,ヘンというか妙な日本語だと感じますね.だからといって,これ以外の日本語訳も思い付きませんが.

ここでは,まず「同様に確からしくない」例を確認することにしましょう.

どんな例を思い浮かべますか?

  • 直方体のサイコロで各目がでる確率
  • コインを投げて{表が出る,裏が出る,立つ}それぞれの確率
  • トランプカードを1枚引くとき,それが{5の倍数,10の倍数}であるそれぞれの確率
  • 画鋲を投げたとき,針が{上向き,下向き}になる各場合の確率

ところで,「同様に確からしい」代表例がサイコロです.どの目もでる確率は等しく1/6 であるとされています.しかし・・・.

結論から言いますと,正しくありません

理由は,完全無比なサイコロを作ることはムリだからです.サイコロをじっくり観察してみてください.サイコロの重心を中心と一致させなければなりませんが,各目を削る(塗る)とき,全く同じ量・重さで削る(塗る)ことはムリでしょう.第一,サイコロの素材を全く均質の材料で作ること自体が出来ませんね.

つまり,私たちは,精密度について許容できる範囲内で,どの目も「同様に確からしい」程度で出るサイコロとして扱っているわけですね.

<参考>

■ 入試問題等を注意深く見ると「なお,サイコロは,どの目も同様に確からしく出るものとする」というフレーズが入っているケースもあります.

■ 完全無欠なサイコロは存在しないにしても,「超精密なサイコロ」を目指した製品が販売されています.チタン製で世界最高レベルの精度を持つ,とうたわれ,日本が誇る製造業技術の象徴と感じ入った次第です.

 

 なお.「数学用語アレルギー」については,まだまだ紹介したい例がたくさんありますので,後日,再掲する予定です.通常用語のほかに,「一般的に」「任意の」など,数学独特の言い回しにも言及します.

 

 

 

09 20200528サイコロ
09 20200528超精密サイコロ
超精密なサイコロ

 入曽精密(埼玉県入間市)

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