グループ学習が ”予定調和” ?

近年,中教審答申「個別最適・協働的な学び」は,各研究会のメインテーマに掲げられ,実際,学校での授業展開が大きく変化してきました.

特に「協働的学び」を踏まえた具体の学習形態として,グループ活動・協議が多く散見されます.中には,「カタチだけグループ学習」「協議ごっこ」に近いケースも.

■ 一旦,数学から離れます.昔^2,A県KT市のある中学校におじゃました際,たまたま目にした中2クラスの様子を紹介します.

ホームルームの時間で担当はベテランの女性教諭A先生でした.

年度末に近い頃で,テーマは「この1年を振り返る」内容だったと記憶します.

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■ A先生は何人かの生徒を指名してそれぞれの1年を振り返らせていきます.

「生徒会長に立候補した○さんの応援演説が一番の思い出です.残念ながら当選はできなかったのですが,伝えることの難しさを経験しました」

「学校祭の準備で苦労したことです.正直言って始めは協力的でなくどうなるのかと不満だったのですが,最後の盛り上がりはすごかったです」

・・・・・

数名の生徒の発言が続きました

■ A先生は,教壇近くに座っているやや小柄な男子生徒Pを指名しました.Pは顔を下向きにして立ち上がり,低い声でボソボソと何かしら語りました.Pにとっては「苦痛」の時間であり,おそらく他の授業でも同様の「教室内立ち位置」であることが読み取れました.

A先生は語りかけます.「Pさん,今,こんなこと(??・・・?)を言ったのかな?」

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Pは少しうなずきます.

「すごく大事な話と思ったのだけど,声がちょっと小さかったね.皆にも伝わるように,もう少し大きく話してみようか.じゃあ,もう1回ね」

私は教室のサイドにいましたので,他の生徒の表情が読み取れる位置にいました.

■ その際,見える範囲内の生徒たちは「Pくん,頑張れ!」「ちょっとでもいいから声を大きくして!」「できるよ!」というような表情をしていました.つまり,クラス内にPを応援する空気を感じ取ったのです.

※後で,校長に確認したところ,「そのとおり」だということでした.A先生は,Pに限らず,他のクラスの生徒であってもそれぞれの「課題」を事前に把握しており,それを踏まえて授業に向かっているという説明がありました.あの「空気感」は一朝一夕に形成できるものではなかったのです.

■ 別クラスに移動したため,その後の様子は把握しておりませんが,ここまでのプロセスを踏まえ,授業を「協働的な学び」に昇華させることは十分可能ですね.

どんな展開があり得るか,予想するだけでも前向きになります.

■ もし,A先生が教室に入るやいなや

■ これは,ワーストに近い授業展開と言わざるを得ません.

カタチ優先ガチガチの授業であり,生徒一人一人の事情や心情に関心が薄く,ましてPさんのような存在は目に入っていないようです.

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⇒ ○△さんの意見を聞いてみたい,自分も話したいことがある・・・このような空気を醸成するためには,日頃の観察や事前調査,小道具準備等々の創意工夫が必要条件です.協働的な学びとばかりカタチをマネするだけでは,結局,予定調和的人材を育成することに直結します.

⇒ そして,「学習の進んだ児童生徒」たちの知的好奇心を削いでいることがケッコウあるのではと見ております.

特に,理数分野において「数理的能力を伸ばすこと将来の社会的地位の安定」とする風潮が保護者・本人に強すぎると思いませんか?

具体には,医学部医学科への異様なほどの「肩入れ」です.少なからずの数学オリンピックメダリストも医学部へ・・・.私見ですが日本経済における「失われた30年」遠因の一つと考えています.

⇒ A大学医学部教授X氏の話:「医学部入試では面接が必須なのだが,受験生がほぼ同じ回答をする・・・祖父母や父母が入院したとき病院にお世話になったこと,職場体験で見聞きした医療関係者が献身的に尽くす姿に心打たれた等々で”一色”という感じだ.医師免許という資格取得がメインと思える」

⇒ 資格取得がゴールならば,予定調和的人材育成で十分なワケです.加えて推薦入試制度の浸透があります.ちなみに推薦入試制度と予定調和人材育成は「相性」がよいのです.とある県立高校では,昨今,生徒会執行部希望生徒の増加が著しいのですが,背景に大学入試における面接に有利だからとの判断があるからそうです・・・ワカリマスネ

■ 以下,算数・数学の授業におけるグループ学習(「協働的な学び」の一場面)のメインテーマを”グループ協議題”とします.

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■ 算数・数学のグループ協議題の設定時,留意しておくべきコトを順不同で挙げます.

① 教科書掲載の例題や問をソノママ用いることは避ける(情けない)

② 一人では不十分,協働で深まるレベルを追究する

③ 単純正解確認レベルは避ける

④ 話し合いの際,意見比較や根拠説明にpointを置かせる

⑤ 小中高数学を貫く思考がハッキリする教材を発掘・開発する 

■ ⑤の主旨は,どの子どももそれぞれの年齢や興味関心,数学理解度に応じて「何らかの答をもつことができる」です.

以上を踏まえると,グループ協議題設定にはかなりの創意工夫・時間を必要とすることが分かります.

⇒ したがって,グループ協議の実施回数も適切にすべきです.一般的に言えば,実施回数が多すぎます(中には,「毎授業時に実施している」などという・・・とんでもないケースもあるやに).これらは,協働的な学びの形骸化に直結し,「子どもたち&教師の評価疲れ」の一因にもなっているようです

■ 次に,佐藤学教授(畿央大学)からの情報で知り得た教材例を紹介します.

出典は「不思議な算数」(小西豊文氏,学術研究出版)です.

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インチキ占い師ズールの「数の占い」

・偶数:ラッキー,奇数:アンラッキー とする

・1から9 までの数のカード9枚を用意

・その9枚のカードを適当に2グループA,Bに分ける(数の順番やグループ名は無視する)

例 A・・・{5,8,1}B・・・{2,9,3,7,6,4}

・A,B それぞれの数の和を計算する(A:14, B:31)

・大きい方と小さい方の差を計算する

・ラッキー,アンラッキーを判定する

例では,31-14=17 よって,アンラッキー

■ この問は,小学生を対象としていますが,内容は,中高生に限らず,大人でも十分「通用」します.

計算結果を求めることが主ではなく,「どうして?」と理由を考えざるを得ない仕向けがあります.

通常の授業展開としては,①個人ごと結果を出させ,反応を見る ②グループごとに理由を探らせる という形になるでしょう.

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■ 冒頭の「1年を振り返る」という題では,全生徒がそれぞれの思いを持っているので,ある意味ではすでに「同じ土俵」に乗っているワケです.②グループ協議でも論を交わすことは可能です.

■ しかし,教科,とりわけ,算数数学では事情が異なり「同じ土俵に乗る」こと自体が難しいのです.

■ 本問は,クラスとして協働的な学びになり得る素地を持ったすぐれた教材と考えます.主張が単純明快であることから,ほぼ全員が「同じ土俵に上がっている」としてよいでしょう.

<高1生対象と仮定しての展開例>

①個人ごと結果チェック・・・小中生と同じ

②グループ協議で予想される反応等

(ア)4, 5 枚のケースでやってみると,やはり奇数になる.これは規則性がありそう.(以下,略)

(イ)9枚しかないのだから,総当たりを列挙して全数調査すれば,どんな分け方でも差は奇数と分かるだろう

→ 全数調査の件数:255通り でケッコウ多く,チェックは大変で非現実的.

各数→AかBの2とおり.よって,29=512 A,Bの区別は不要なことから512÷2=256,  0個は除くとして,255とおり

→ 乗法定理の活用例だが,乗法定理などと言わずとも,2,3つの例から帰納的にワカル小学生はいます(分かってほしい!).

(ウ)1+2+3+・・・+9=45 (※)

9枚のカードを適当にA,Bグループに分け,それぞれの和をSA, SB とするとき,いずれか一方のみが偶数,他方が奇数となる.なぜならば,(SA, SB)=(偶数,偶数),(奇数,奇数)の場合,SA+SB は偶数となる.しかし,※より,SA+SB=1+2+3+・・・+9=45:奇数である.これは矛盾!

したがって,SAとSBの差は必ず奇数となる.

→ ツメのところで背理法の考え方が顔を出す.背理法などと言わずとも,論が成り立たないことは理解されると思われる.おそらく,小学生でもワカルヒトはいます(分かってほしい!)

すぐれた教材は,学習歴や年齢を超えて,知的好奇心をくすぐるもの.つまり,小中高を貫く教材の発掘・発見・創造が大切

<補足>

■ 次回テーマは「グループ協議題(その2)」(予定)です.

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