数学vs物理

学ぶ上で「物理にあって数学に欠けていること」ってありますよね(もちろん,その逆も).例を挙げてその「欠く点」のカイゼンを図りたいと思います.

09 0230422数学vs物理1

典型的な問題2例

09 20230422数学vs物理2

A(物理) 地上19.6mのところから,水平方向に初速度2.0mで小石を投げた.地面に落下するまでの水平距離と着地に要する時間を求めよ.

ただし,空気抵抗は無視するとする.

09 20230422数学vs物理3

B(数学) 図のように円筒形タンクに水が満たされている.

底に直径5cmの穴から水が流れ出ている.タンク内の水が空になるまでの時間を求めよ.

ただし,水流の速さは一定値20cm/secとする.

問題 AとB の決定的な違い

■ 問題A,Bともに基本中の基本レベルの内容ですので計算式等は略します.

何が 問題 か?

■ それは,ただし書き の違いです.

A(物理)… ただし,空気抵抗は無視するとする.

B(数学)… ただし,水流の速さは一定値20cm/secとする. 

オーバーな言い方をしますと,この両者には「頭を抱える」ほどの差があります.

A(物理)

⇒ 空気中を動く物体には,空気抵抗という抗力が存在する.走る電車の窓から手を出して手のひらでも体感できる.

抵抗は存在する.その上で

まずは真空という理想状態で成り立つ数式を確認し,次に空気抵抗をどう料理(式化)するか

というマトモな方向で手順を示しながら思考を発展させている.

09 2023042423数学vs物理6

B(数学)

⇒ このただし書きでヒトの思考はストップする.

水道の蛇口のようにタンクの穴から一定の水圧で水が流れるのだとサラリと受け流すことを推奨して計算を進めさせている.

※ 図のように,タンク側面P,Q,R 3ヶ所に穴が空いている.水を満タンにした際,水が流れる様子をラフでよいから書かせましょう.学生でも様子を見るとサマザマですよ.それでも「受け流させる」のでしょうか.

09 20230424数学vs物理4

本問(数学)のような問はヒトをダメにする

■ 本問(数学)の何がいけないか?

⇒ プールはともかく海で5mも潜水するのはかなりシンドイです(素人はムリ).あれが5気圧という水圧です.

⇒ したがって,タンクの穴の位置というのは,事象を分析する際,決定的な要素

⇒ 流出について,強引に単純化(水道蛇口のようなイメージを与えて)し,思考や迷いをストップさせて,数学リーダーが意図した計算式の練習に誘導しています(割り算計算を目的化している).

■ ある現象を通して洞察力・観察力を発展させることに価値があり,計算は手段.本問のような本末転倒指導は百害あって一利なしです.

水流の速さ一定 ⇒ まず,ムリ

■ 水面の高さは刻一刻と変わりますので,底の穴近くの水圧も毎瞬変化(減少)しています.したがって,式化のためには,微分方程式を立てる必要が出てくるわけです.

09 20230424数学vs物理5

■ 水面の高さがドンドン下がるのに,タンク底の穴から流れ出す水の速さを一定にさせるには,穴の大きさを自動で調整するバルブが必要で,かなりおおじかけな装置となりそう.

それくらい「流出の速さ一定」というのはハードルの高い条件なのです.

まず,この事実に興味関心を持たせるべきであり,割り算計算をメインに据えることは「目的と手段の取り違え」となります.

■ 思考を深めるという視点から改めて各教科書を分析することは重要です.

例「…なお,サイコロで,各目の出る確率はそれぞれ等しいとする」

⇒ せめて「実際にはあり得ない話だが」,と釘を刺してほしいですね(立方体の中心が重心と完全一致するサイコロの製造は不可能なので).当たり前感からは洞察力と鋭い観察力は産まれないでしょう.

 

<補足>

■ テストで〇をもらったからうれしい!だけではダメで,ある事象の理解が進んだからうれしい!にしたいものです.

■ 次回テーマは「比例の扱いが安直すぎませんか?」です(予定).変化といえば「比例」を思い起こすほど比例は教室内にも染み割っています.ジックリ考えてみましょう.

にほんブログ村のランキング(数学教育)にかかわって,バナー↓をclickしていだだければ幸いです.

選んだblog先で↓

なるほど算数&数学 - にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です