安直すぎる比例解説
ともなって変わる2つの量 ⇒ 即,比例! こんなパターンがスッカリ定着し,算数・数学リーダーは「早く比例計算に導きたい」ようにさえ見えます.計算の前に「観察・思考」があるべきです.
■ 水そうに1㍑のバケツでくり返して水を入れたときの深さが
1回:4cm, 2回:8cm, 3回:12cm…
となった.このとき,・・・
■ 上記のような例ならば,典型的な比例関係であり,計算式もすぐ求められます.
日常生活に見る比例
■ 図は,1ケースで購入したビス(ネジ)でおそらく数百個入っているでしょう.
おおよその全体個数を求めたいと思います.
日常的な光景からの話題であり,算数・数学の題材としては◎クラスかと.
■ 教科書の解説を踏まえ数学リーダーは,学習者とやり取りをしながらおおよそ以下のような展開をします.
①適当に5ヶくらいのビスを取り出し,それらから1ヶ当たりの平均の重さを求め,仮に2gとする.
②{(ケース全体の重さ)-(ケースだけの重さ)}を求め,仮に500gとする
③ビスの全体個数をxとすると
1 : x =2 : 500 という比例式が成り立ち,
x=250ヶ が求まる.メデタシメデタシ!
■ ただし,これだけで 終えて次にへ進む ケースがほとんどです.
実にモッタイナイ
※上述程度で済むことについて,教科書ならページ制限やリーダーの指導余地を残す意味もあるので理解できます.が,リーダーが本問を解くことだけで終始するのはいただけません.
答えは求められた.しかし,事象に対する観察力は進歩していない
と言わざるを得ません.
「驚き」を強調しよう
■ 250個程度なら時間かかっても実際に数えられます.
しかし,PCもロケットもない時代に月までの距離は約38万㎞と知られていました.
超弩級の巻尺で測ったものではありません.ヒトはどうやって知り得たのでしょう?
そう,巨大三角形を想定して比例式を用いて近似値を求めていました.
つまり,通常の測定では不可能なことも比例の考えで計算できる!ということなのです.
子どもたちの「知的驚き」への誘(いざな)う指導は重要です.
⇒ 昨今,自発性や学び合いの形が強調され,ときには知的刺激と形を対立させる論議も散見できます.全くケシカラン話です.
比例の考えは,相似比一定,そして三角関数,微積分と繋がっています.
比例しない例を知って,比例がさらに分かる
■ A大学の学生に確認しました.
Q この発想(数本のビスの重さ → 全体の本数)が適切・正しいワケはどうして?
A 日本の工業製品は同一規格で生産され販売されているからです.
本問は
① 重さと個数が比例する
② ただし,1個ごとの製品の重さが一定(≓ 同一規格)であることが必要条件
③ したがって,重さの異なるビスの場合は適用できない
④ 1本でなく5本程度のビスから1ヶ当たりの重さを求めた理由を考えさせましょう(→標本平均)
微分方程式:その前提でつまずく
■ 90°Cのコーヒーを室温10°Cの部屋に3分間置いたら70°Cになったという.さらに3分後のコーヒーの温度を求めましょう.
■ 典型的な微分方程式の問ですが,単純な比例でないことをナットクできるかどうかが,最大の関門です.
最初の3分間で20°C下がった→次の3分でも20°C下がる??そんなワケありません!
小6のとき,比例を観察力を鍛えることなく計算のみに走ったツケ(一事が万事!)が高校数学後半で「暴発する」ケースを多く見てきました.
<補足>
■ 2変数が「比例する」のはマレなのです.そういう認識を体感・実感させた上で比例を扱うべき.
■ 観察力・洞察力を高めることを意識したいものです.フランスのバカロレアテストでは,哲学が全員必修で,例えば「私たちは未来に対して責任があるか?」(’21)など1行問題が多く,試験時間4時間とか.
■ 次回テーマは「立方体の回転」(予定)です.
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