濃度出題(全国学テ21.6%正答率)に異議あり
’22全国学力学習状況調査(以後,学テ)「濃度正答率21.6%」はかなりショッキングな結果で,本blog(‘23.10)でも話題にしました.その後再考を重ねましたが,逆に深い疑問が残りました.
おさらい:物議を醸した全国学テ結果より
■ 要するに,ある濃さのジュースを半分の量にしたとき,濃さはどうなりますか?という問に(つまり,味見ですね)
約80%の子ども(小6生)が間違った,これは大事(オオゴト)だ!
となったワケです.
■ 小6の子どもは「味見も知らないのか」ということで,算数以前の,日常生活の常識・チエの欠落が注目されたのです.
確かに,dataを見る限りそのとおりかと.
冷静に考えましょう
■ 一方,次のような場面を想定します
子どもの目の前で,大鍋に入っているカレースープをよくかき混ぜてカップに少しすくいます.
そのカップ現物を差し出して
カップと大鍋のカレー,どっちがからい?
同じ?,違う?
と目の前で問います
⇒ ほぼ全員の子どもが正解すると確信します.低学年の子ども(あるいは園児)でも正しく判断できるかもしれません.
■ この問いかけに,小6生の約80%が間違うことなど,到底あり得ないし,あってはいけないことだと考えます.
⇒ 問の本質は同じである全国学テ結果はどう考えればよいのでしょう.
学テとの落差は何?
■ 学テで本問を出題したねらいは
日常生活の場面に即して,数量が変わっても,割合が変わらない場合があることを理解しているか(国立教育政策研究所)
であり
さらに
日常生活や社会における事象を数理的処理する技能を身に付けること(学習指導要領)
とも深く関わっての出題だったと考えられます.
■ 以上を踏まえて本問作問者の「思い」について勝手な想像をしました.
①過去の濃度問題正答率は48.3%(’12中理)・・・難易度は本問より高く記述式
⇒ 本問は日常生活の中でより親しみある内容,しかも3択マーク式でもあることから正答率は少なくとも2/3(67%)以上にはなるのではないか
②したがって,大半の子どもたちは,ジュースの濃さの大小比較は,日常生活の体験から判断できているとしてよいであろう
⇒ そのプロセスを踏まえて濃度計算(数理的処理)へと進んでいく道筋が示せたことになる
■ しかし,本問の正答率 21.6% という意外・心外,ある意味で屈辱的な結果になりました.
⇒ これでは,次の段階(数理処理)への見通しがまったく見えません!
大仕掛けの出題形式
■ 次は全国学テの大問2(3)です.
■ 全国学テですが,’22算数は全部でナント27ページ,大問1は5ページ,大問2は4ページで,(3)が本問.テスト用紙ではなく,テスト冊子です.
■ 問(3)の主旨は,量を半分にすると,ジュースの割合(濃さ)は{変わる・変わらない}の確認です.
⇒ しかし,問題文(上記)は,各選択肢の文章が長く,迷わせる言い方で構成され何とも「大仰」な出題形式です.本質でないところで子どもたちを振り回しています.
⇒ 本問の主旨はシンプルですから,記述式なら題意がストレートに伝わったのに
例「箱とカップに入っているジュースの濃さを比べなさい.・・・」
■ 現行のマーク式テストは,子どもたちが出題者のなぞる思考に沿わねばなりません.
⇒ テストとは,本来,採点側が子どもたち(受験者)の思考を推し量り,評価・点数化するべきものです.だからこそ,出題側のレベルを超える受験者の発見にも繋がり得るのです.マーク式?不可能です!
<補足>
■ リード文の長さを読み解く力も学力である.したがって,本問のような長い文にも慣れてもらうことも重要である・・・という昨今の「大河ドラマ」風出題を支持する向きもありますが,にわかには同意できません.正直,出題者の意図を探りながらの回答作業はホントに疲れます(例:’24共通テスト数ⅠA三角比).
■ 次回テーマは「数学秀逸たとえ話」(予定)です.
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