説明を2回くり返す〇先生
新学期のスタートにあたり,算数数学を一旦離れて,”話し方”がテーマです.
「教育はココロ.話し方?それは技術レベルのことだろう」と異論をもつ向きもありましょう.ここでは不毛な二項対立論を避け,話す際の”ココロ構え”について取りあげます.
TVドラマ会話 と 日常会話 とどこが違う?
■ 何気なく観ているTV・映画や舞台における俳優の会話 と 私どもの日常会話との違いは何でしょう.
人にもよりますし,また感じ方の程度も差がありましょうが,次の点を挙げます.
TVなどの会話・・・・・俳優が同じセリフをくり返すことはまず,ない
日常会話・・・・・同じことを2度(orそれ以上)くり返して会話・発言することが結構ある
■ それぞれの背景
TV・舞台における会話・・・・・脚本やシナリオにしたがってセリフを言う.したがって,俳優がセリフをくり返すことはないだろう(意図した場合を除き).また,視聴者・観客は,意志を持って観る・聴く(→ listen to)から,セリフは一度で伝わり得る.
日常会話・・・・・メンバーは,参加料を払って集まったものではなく,自由にフランクに会話をするし,聞き手も耳をそばだだているわけではない(→ hear).
したがって,話す方も伝わっていない可能性が大と考え,伝達の確実さを求めて,つい話を2度以上くり返すのかも知れない.
ただ,聞き側にとって同じ話が2度3度続くと,辟易することも事実ですね.
■ さて,授業担当者の解説は,どうあるべきでしょうか.TV・演劇型か日常型か.
算数数学の授業に絞ってみましょう.
算数数学・・・授業での話し方原則
■ 算数数学の試験解答~論文まで,その中身は,①必須のことはすべて入っている,②ムダ・不要な部分はそぎ落とす の2点が要請されます.
すなわち,この”必要かつ最小限”の内容は,論理を根底にすえ置く数学の宿命でしょう.
■ 算数・数学の授業における解説も,この”必要かつ最小限”の精神を踏まえた展開でなければなりません.
■ したがって,同じ説明をくり返すこと・・・数学らしくないふるまいとなります.なぜなら,「最小限ではない」からです.
また,それだけではありません.この「くり返し説明」は教育指導上のマイナスが大きいのです.クセになっていて本人が気付いていないことも多く,改善される例はマレです.
コトバの力を高める
■ 算数数学に限りませんが,授業担当者は,教材の本質を研究し,整理し,短い時間に筋道を立てて話さねばなりません.(参考:「教師の話し方技術」明治図書)
■ 今回のテーマのきっかけは,かなり以前のことになります.あるとき,クラス日誌に次のような記述がありました.
「○先生は,授業でいつも同じことを2度くり返す」
感想や評価はありませんでしたが,覚醒させられた記憶がいまだに鮮明です.
「くり返し」の罪
■ 授業における,クセになっている”くり返し説明”はどんな影響を与えるのでしょうか.
①物理面・・・いつも2度くり返して話す指導者は,「1/2程度しか解説していない」と言われても仕方ない.単純に,50分の授業が実質25分の内容だったとはならないかも知れないが,市民感覚では正しい指摘.
②精神面・・・子どもの心理に注目すると,ある種「イラツキ」感を助長しており,教科への関心・理解意欲の低下に繋がっている.
③教育指導面・・・「分かりましたか!」などと声を大にして,何度も同じ注意や指示をくり返す教室のイライラ・ザラザラ感は,もしかすれば,担当者自身の言動も反映しているかも知れない.逆に「あの先生は一度しか指示伝達をしない」という評価・声があったとすれば,それは教室内の”しつけ”と直結する.
■ 「あの先生は一度しか指示伝達をしない」がよい意味で効力を発揮するには,新学期5月連休前までがその勝負期限です.
最初はトラブるでしょう.集合場所と時間を間違う,持参物を忘れる.ときには,校長室掃除当番が行かなかったり・・・.そこは腹をくくってガマン比べです.
どうしてもくり返さねばならないときもあります.そんなときは,子どもの誰かを指名して確認させることも有効ですね.
■ 昨今,優しさとしつけをゴチャにしている雰囲気を感じます.両立を目指しましょう.
<補足>
■ 次回テーマは,「面積の行く末」です(予定).端的に言いますと,面積・体積等の求積問題は,大学入試までです.すると,なぜ小学校算数以来,面積・面積って問い続けたのでしょうか.中学・高校・大学入試で出題されるからですか?
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