結局,標準偏差ってなに?

過日,ある高校生2人と会話する機会がありました.

09 20240528要するに1

「そうか,中間試験なんだ.数学の範囲は?」

「資料の分析で,平均値や相関,標準偏差なんかが出そう」

「ところで,その標準偏差ってケッコウ計算が面倒だけど,結局,何を表しているの?

・・・

■ 相関係数は比較的説明できるヒトが多いようですが,標準偏差はどうも形勢よろしくない感じです.

09 20240603要するに2

■ 上図は,それぞれ9名(No1~No9)からなる3グループA,B,Cの小テストの結果を示しており,平均値は同じm(約5点)であるとします

⇒ 平均点は同じですが,グループA,B,Cには特徴があります

⇒ その最たるものは,data(点数)のばらつき具合です

このばらつき具合を数値化したのが標準偏差です

09 20240603要するに3

<ばらつきを数値化する手順・考え方>

①各メンバー得点と平均値(上図で直線y=m)との差(偏差という)に注目 ⇒ 例:x3の場合:y3-m

②各メンバー全員9名の偏差を合計し,9で割ることで一人当たりの偏差を求めてグループ比較する ⇒ 失敗

※なぜなら,平均値より大なる数合計と小なる数合計はプラスとマイナスの数がキャンセルし合い,つねに0となるので(平均値ってそういうイミでした).

③偏差についてマイナス偏差をプラスに変換すればよい ⇒ 2案:(ア)平方する,(イ)絶対値をとる 

※(イ)はideaだけで終わる.そのつど絶対値記号を外すことが数式化に馴染まなかったためか?(←かってな想像)

④(ア)平方が採用され,data数(=n)分を合計し,その和をnで割ることで一人当たりの偏差を求めるとグループ比較できる

上図:V={(y1-m)²+(y2-m)²+(y3-m)²+・・・+(y9-m)²}/9

※Vのママだと,一般にVの数値が大きくなりすぎて扱いにくい(←かってな想像).そこで

⑤ σ=√V として,σを標準偏差と命名(定義)

※ 数学では,数を半分(小さく)にしたいとき,÷2でなく,平方根をとることが多い

※なお,全員が同一点をとる → 全員の偏差が0ですから V=0 となります

09 20240603要するに3

■ 意味理解のための方法の一つは身近な例から結果を予測し,計算式全体を再認識することです.

<例>

①校内外のテスト結果一般について{国語,社会,数学,英語,理科}のばらつき具合を予測して高い方から並べる.実際の結果と比べて,教科の違いについての認識を持つ.

②実際の例(大学共通テスト ‘24.1 )

国:17.7   地理:15.0   数ⅠA:20.7   英リーディング:19.9   物理:22.8

⇒ 一般に,国語・社会より数・理のばらつき度が高く,英語はその間.特に,記述式の模試などではその違いがさらに顕著です.

■ 標準偏差だけではありませんが,「意味理解」を伴わない計算レッスンをする姿は虚しくなるばかりです.

■ リーダーの中には「今,分からなくてもいつかナットクできるときがくるから,まず計算方法を覚えなさい」と説くヒトもいます.が,はたして「後で」ナットクしたケースはどれくらいあるのでしょうか(2/3のイミがあいまいだったヒトが高校生になってナットクする?).

■ 標準偏差の場合,数学リーダーは当然,導入時にばらつきについて本blogのような解説をしています.

しかし,なぜ,少なからずの生徒が公式棒暗記に陥り,かつ,意味理解もできないのか?

09 20240604要するに4

①生徒が授業中,あれもこれもすべてに集中して聞く・聴くことはまずない(反論もありですか?) 

②そのとき分かったとしても記憶の定着まで届かないことが多い 

標準偏差を身近な例で認識していない(抽象的なコトを抽象的に理解している) 

④折に触れて意味理解を問たずねる習慣がリーダーにない

→ 例「○○さん,σ=15 と σ=20 この違いは何を言っているんだっけ?」 

⑤定期テストで意味理解に触れる問を出題していない

→ 例:(1)クラス全員が同じ点数をとったときの標準偏差を求め,その理由を述べなさい」

(2)(ボーナス問)昨日の国語テストで本クラスの標準偏差は13であった.では本数学テストの標準偏差を予測しなさい.正解に近かった上位5人に,それぞれ5点,4点,3点,2点,1点をボーナス点として付け足します.

<補足>

■ 次回テーマは「三角関数値暗記の罪と罰」(予定)です.

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