鈍角三角形面積 ⇒ Mさん(小学生)のナットク法
■ 三角形の面積公式は,s=ah÷2 (a:底辺の長さ,h:高さ) です.言うまでもなく鈍角三角形も含めての公式ですが,しっくりこない(釈然としない)ヒトもいるようです.
■ その違和感なり不安感の大元は,高さが底辺から離れていることにありませんか?
■ 数年前,山形県の小学生Mさんの自由研究作品と出会いました(「算数・数学の自由研究コンクール」理数教育研究所主催).残念ながら全国審査まで届きませんでしたが,教科書にある公式に正面から向き合った印象に残る作品でした(※近年は,統計的な調査や観察に関する作品が多くなり,やや食傷気味です.私見).
等積変形のくり返し
■ 上図は,鋭角三角形の面積が長方形の面積の1/2であることを示しています.公式 S=ah÷2 の背景がよく見えますね.
■ 次は,鈍角三角形の「等積変形」です.
■ 最初の鈍角三角形に,折り返し等の変形をすることで,長方形の出来上がりが分かります.結局,公式 S=ah÷2 にたどり着きました.
長~く伸びた鈍角三角形でもいいの?
■ しかし,Mさんの問題意識は続きます.先ほどの鈍角三角形は,頂点Pが比較的長方形に近いので,折り返しも1回で済みました.でも,鈍角三角形にはいろいろなタイプがあります.極端に尖った鈍角三角形でも面積公式は同じだろうか,とMさんは疑問を抱いたワケです.
■ 確かに教科書では,”平凡な”鈍角三角形を例に挙げて公式を導いていて,”とんがり度の強い”鈍角三角形は扱っていません.そこで,Mさんは次のような図を描いて自身へのナットク度を高めています.
■ 最初の△PABが等積変形して△P’ABになることが分かりますね.頂点P’がかなり長方形側に移ってきて,とんがり度も弱まりました.この作業を必要に応じてくり返せば,いずれ証明の済んでいる”平凡な”鈍角三角形になります.
Mさんの感想
■ Mさんの感想(一部)
「・・・この公式が好きになりました.すべての三角形に通用する式を考えた人はすごいなと思いました」
■ この「すべての」という個所が本テーマの本質です.それに迫った小学生Mさんの問題意識(こだわり)に敬意を表します.算数・数学を学んでいく上で,意味あるこだわり感をもつことは,極めて意義深いことです.学年・年齢は関係ありませんね.
■ 本稿について,Mさん手書きの図など,作品自体をソノママ紹介したかったのですが,時もかなり経過しており,承諾手続きが現実的でないことから,Mさんの考え方を踏まえた内容にいたしました.
こだわり感あれこれ
■ 遠藤章博士(高脂血症治療薬スタチンの発見で,ラスカー賞,日本国際賞等受賞)は,東北の田舎(失礼)のお生まれです.幼い頃,キノコのハエトリシメジが”ハエには毒で,人間が食べると美味しい”様子を身近に見たことが不思議でならず,そのこだわりが現在に至る研究に繋がっていると語っています.
■ 世の中に余裕がなくなったため,あるいは,共通マークテストの点数アップに専念させるため,日本のあちらこちらで「貴重なこだわり」をスルーさせていないのかと,不安を感ずる昨今です.
※ 秋田魁新報 遠藤博士顕彰碑設置の記事(21.5.2)
<補足>
■ 次回テーマは,「0.999・・・=1 ?」(予定)で,悩む・悩まされる問の筆頭格です.定義?公理?定理?・・・そもそもこれらの疑問が「出る」自体おかしいのか?一緒に悩みましょう.
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