宅配”120サイズ:〇〇円”の数理
コロナ禍,今や宅配サービスは必須インフラとなりました.気になる料金ですが,ある大手宅配業者の料金表によると「120サイズ1610円」などとなっています.120サイズに限定して数理的な解釈を試みましょう.
“120サイズ○○円”の意味
■ 「120サイズ」とは,荷物を直方体(各辺をa,b,c)として
① 100cm<a+b+c≦120cm
② (荷物の重さ)≦15kg
の場合をいいます.①で”100cm<“とあるのは,100cm以下は「100サイズ」になるからです.
■ つまり,「〇サイズ」とは,3辺の和の上限(最大値)が〇cmということですね.
“120サイズ”であれば体積は同じか?
■ 念のために確認しましょう.3辺の和=120cm であれば,体積Vはいつも同じですか?
つまり,a+b+c=120 ならば,V=abc は一定(※)が成り立つかどうか.
常識的には,業者が荷を運ぶ際,その容積(体積)と重さで”負荷”を測り,それに伴って料金が決まる.すると,容積が一定とならない料金基準は合理的でない・・・よって,V:一定値と考えてもおかしくないのですが.
■ では(※)の真偽をハッキリさせましょう ⇒ 真ならば証明を,偽ならば反例(一つで可)を挙げてください.
■ 結論はよろしいでしょうか.いくらでも反例が挙がりますね.120という数値が大きくて扱いづらいならば,もっと小さい数でやってみましょう.
“120サイズ”であっても体積いろいろ
■ 3辺の和:a+b+c=120 のとき,体積V=abc
■ 上図でⅠ,Ⅱともに3辺の和が120cmですが,その体積はどうでしょう.
Ⅰの体積V₁=40×40×40=64000=64㍑(← 64㍑が体積Vの最大値です.後述)
Ⅱの体積V₂=20×20×80=32000=32㍑
となり,体積が2倍違います.水の重さで言えば,Ⅰは64kg, Ⅱは32kg ですね.これでも宅配料金が同じとは!? ⇒ 実際は重量制限がありますが,それにしても”容積格差”は事実です.
■ 宅配料金ルールを,”120サイズ式”(3辺の和:一定) から ”体積V:一定”への変更を試みましょう.
つまり,体積V=abc≦ (一定値) をみたすときは同一料金とする方法です.
「V=abc(一定値)」ルールの致命傷
■ サイズ目一杯の a+b+c=120 の場合で,現行ルールと比較検討しましょう.
(1) 確認のしやすさ
送り主と宅配窓口担当者の双方にとって,a+b+c≦120 のチェックは巻き尺を用いて実にスムーズに行われます.何しろ,スケールを各辺に当てて最後に120以下の目盛りの確認ですみますので.
その点,V=abc ≦(一定値) のチェックには,電卓が必要となるケースが多いので,敬遠されますね.
(2) 「V=abc≦(一定値)」ルールの”アキレス腱“
■ 相加平均・相乗平均に関する性質(定理)があります.n個の非負数で成り立つのですが,ここでは,n=3 の場合を紹介します.
■ 上の結果を踏まえて
「体積 v=abc ≦(一定値)(※) のとき同一料金」とするルールの妥当性についてですが,
仮に, V=abc=64㍑・・・① とします(不等号を付けず,最大値64の場合で考えてよいでしょう).
たとえば,V₁:a=b=c=40cm と V₂:a=20cm, b=40cm, c=80cm は3辺の和の長さは異なりますが,体積が同じですので,同一料金とするワケです.
宅配トラックに荷を積む際,重さを別とすれば,各荷の容積の大きさが料金に反映されることには説得力がありますね.
<困る例>
■ V=abc=64㍑・・・①
a=b=10cm とすると,c=640cm=6.4m となります.この長さですとトラックに荷台に収まらないかも(通常,荷を勝手に曲げて輸送することは出来ません).
それどころか,①でa,bを限りなく0に近づけると,cはいくらでも長くなっていきます.
これは,反比例の式:y=1/x で,x→0 (x>0)のとき,y → ∞ となる様子と同じです.
<マトメ>
■ 直方体で3辺の長さの和が一定でも,体積は一定値にはならない.体積の最大値は,立方体のときである.
■ 「y=1/x で,x→0 (x>0)のとき,y → ∞ となる」ことの様子を,皮膚感覚で理解させたいもの.今回の直方体の変形も,理解のための一助になります.
昨今,算数・数学では,「問があって,即,数で答える」・・・こんなパターンがほとんど.「数が変化する様子」にもっと興味関心を持たせ,価値を置きたいものです.
<補足>
■ 次回テーマは,予定を変更して「祝ノーベル賞受賞」(これも予定)です.ローカルな視点になりますが,ノーベル受賞にかかわって,①地域格差(「無縁」地域),②出身高:公私立の「差」・・・私立圧倒的優位?いやいや.
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