必要(十分)条件って何?
〇は△のための何条件か?という問がありますが,”問題のための問題”となってはいないか,という疑問&不信を以前から感じてきました.順を追って話を続けます.
そもそも命題とは
■ 命題とは真偽のつく文や式のことです.
「2+3=5」も命題に入りますね.
すると,数学教科書のどのページも命題だらけになります.そこで,少し絞ってみましょう.
真か偽か
■ 命題の典型は,p,q を条件として pならばq という形です.
これをp⇒qとかき,そのつど,真偽を判定します.
そして,「p⇒q:真,かつ,q ⇒ p:真」のときは,「p⇔q」と簡素化します.
例をいくつか
(1) x²<1 ⇒ x<1 (真)
x²<1 を解くと,-1<x<1 この範囲にあるxは,必ずx<1 となるので,上の命題は真となります.
(2) 4辺の長さが等しい四角形があり,対角線が直交している ⇒ その四角形は正方形である (偽)
反例:ひし形もあるじゃないか!
(3) 日本国民である ⇒ 都民である (偽)
反例:埼玉県民もいるじゃないか!(埼玉県にする理由は特にありません.秋田県民でもokです)
算数で,p⇒q の形を探す
■ p⇒q 形式の命題は,高数A(1年次相当)で本格登場します.中数でもときおり顔を出しますが,見逃すヒトが多いかも.
■ さすがに算数教科書では見かけませんが,小3算数で近い形を発見.
要するに,次のような主張です.
「円と半径を使ってできる三角形 ⇒ どれも(必ず)二等辺三角形になる」
■ 上の記述で最大のpointとなる語句は,どれも です.例外(反例)が作れないことから,”どれも”の背景に,無限の概念が含まれていることが分かります.
小3生でも「不思議だな~」「ホント?」「もっと確かめたい」といった発言や表情をする子どもがいたら,数学リーダーはスルーしてはいけません.是非,立ち止まってその反応をみなで共有すべき ですね.
必要条件とは? 十分条件とは?
■ 定義は次のとおりです.
命題:pならばq について
また,p⇔q のとき,pとqは互いに必要十分条件(同値)といいます.
■ 初見のヒトにとって,この定義はどんな印象を持つのでしょうか.
「翻訳の雰囲気・臭いがプンプンする.いくつかの例から理解していくしかないな.命名を逆に覚えたら悲惨だな」
こんな不安感を抱くヒト,いますよね.
例1 「n: 偶数」は「n: 4の倍数」のための何条件か?
解「n: 4の倍数 ⇒ n: 偶数」は真です.
したがって,n: 偶数 は,n: 4の倍数 のための必要条件です.
例2 「都民である」は「日本国民である」のための何条件か?
解 「都民 ⇒ 日本国民」は真.よって,都民であることは,日本国民であるための十分条件です.
■ 推測ですが,この「〇□条件」について,3割くらいのヒトは,どこか曖昧さと不安を抱えたママにしているのでは.
定義を思い切り単純化する
■ 「何条件か?」と問われると,少なからずのヒトは「どっちだったかな~.逆に覚えているかも・・・」とドギマギしますね.
そこで,以下のような提案をします.
1 p⇒q の真偽の判定こそ本質!← 命名ルールに惑わされず,真か偽かの判断を優先
2 定義文中で(qのための)という箇所は,ないこと(消去)にして命名を定着させる
← 英訳では「for~」という形容詞句で文の後半に出てくる.つまり,前段だけの訳で事足りる
3 日常用語の「必要,十分」とはベツモノと割り切った方がよい
← 必要と十分の語句と,こじつけ的に絡ませる解説もあるが,やや無理筋
← あえて覚えるとすれば,「⇒の向きが必要」,「矢(の向き)が必要」がお薦め
例3 次の□の中に,必要,十分,必要十分のうち適切なものを入れなさい.
(解答例では「~のための」をあえて省いています)
(1) 「カサが開く」は「雨が降る」のための□条件である.
解 とにかく,真偽の判定が優先です.
①「カサ開く」⇒ 「雨降る」
②「雨降る」 ⇒ 「カサ開く」
当然,②が真です.
すると,”矢(の向き)が必要“ですから,「カサ開く」は必要条件となります(「雨降る」は十分条件).
(2) -1<x<2 は,x<3 であるための□条件である.
解 とにかく,□条件に惑うことなく,真偽を判定します.
① x<3 ⇒ -1<x<2
② -1<x<2 ⇒ x<3
②は真です(①は,x=-5 などが反例).
「矢が必要」より,-1<x<2 は,十分条件となります.
(3) 自然数m,n について,条件「mとnはともに奇数」は条件「m+5n は偶数」のための□条件である.(’19 大学センター試験)
解 とにかく,真偽の判定です.
① mとnはともに奇数 ⇒ m+5n は偶数
② m+5n は偶数 ⇒ mとnはともに奇数
①は真ですね(証明までは不要かと.適当な例で確認する程度)
②は偽(反例:m=n=2など)
「矢が必要」より,「mとnはともに奇数」は十分条件となります.
<補足>
■ しつこいようですが,真偽の判定こそが本質であり,命名は枝葉部分です.少なからずのヒトが,その枝葉に翻弄されていることに長年,疑問を感じてきました.「p⇒q の真偽を判定しなさい」という出題で十分かと.
■ 次回のテーマは「隠れている無限」(予定)です.数学は無限を扱う学問であるという見解もあります.でも,授業で無限はあまり意識されていないようです.
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