円周率≓3 へのバッシング
間もなくπの日:3月14日ですね.円周率π≓3.141592653589793(小数点以下15桁) を用いたのは,7年に及ぶ飛行を終え,奇跡の生還(‘10.6)として歴史に名を残した惑星探査機初代「はやぶさ」の制御に関わってのことでした(※異見あり.後述).
■ すると,π≓3 というのは,何ともおおざっぱで”粗い”扱いですね.
■ 平成生まれの方はご存じないかも知れません.今から20数年前,円周率πがマスコミで大々的に取りあげられたことがあります.πは迷惑そうでしたが(私見).
円周率πは3とする!
■ ’02年の学習指導要領改訂で算数では「円周率πを3とする!」などと報じられたのです.いわゆる「ゆとり教育」を目指した改訂でしたが,そうでなくとも「反ゆとり」の声がくすぶっていた時期でしたので,カッコウの話題となったのです.
■ 結論から言えば,報道(一部?)の誤認・早とちりによるミスリードでした.しかし,情報というのは恐ろしいですね.第一報によるfirst impression は消えません.むしろ,引用の引用が続き,今でも「良識・世論がπを3.14に戻した!」と思っている方もいるでしょう.
幸か不幸か,その後,円周率πについての議論は絶(耐?)えました.
■ ここでは,”騒動”の再考ではなく,依然として少なからずの受験生に見受けられる”π不感症”を話題にします.
πは単なるギリシア文字か!
■ cos5/4π(=-1/√2)について,高校生一般の正解率は,いろいろなdataから判断すると,おそらく半分以下でしょう.
単なる関数値ですから,三角関数の”基本の基”です.
■ 数学にも二次関数やベクトル,微分積分など,いろいろな分野領域があります.
しかし,学びの入り口近くで,こんなに”つまずく”領域は他に見当たりません.
皮肉にも π≓3 が分かっていない
■ たとえば,「sin3 の値はどのくらいか?」という問について,少なからずの高校生は,答えに窮します.
また,「sinπ/100≓π/100」という式も「ナヌッ!」という感じかと.
■ 原因はハッキリしています.
①三角関数の定義をあいまいに理解している
②円周率π=3.14・・・,つまり「3に近い」という量感覚がない
③三角関数値を棒暗記している・させている環境下にいる
④弧度法が分からない
■ ②で,大ざっぱに π=3.14・・・≓3 と見れば,sin3≓sinπ
ここで,sinπ=0 が分かっていれば(棒暗記でも),sin3 は0に近い数と認識できます.
ところが,πをギリシア文字としか認識していないとすれば,この論理展開すら成り立ちません.
■ sinπ/100≓π/100 について
|θ|≓0 のとき,sinθ≓θ に基づきます.実際,sinπ/100≓0.031407・・・
π/100≓0.0314159・・・
まずまずの近似となっています.
■ 20数年前のπをめぐる議論は棚に上げることにして,
最低限,円周率π・・・およそ3 or 3強
という認識は徹底する必要があります.
π≓3 の徹底
■ 歴史の流れに逆らうようですが,あえて,π≓3 を強調します.
■ 1円玉ですが,図のように,半径は1cmです(直径は2cm).
⇒ 1円玉の直径を1cmと信じて疑わない方,いませんか? ←いますよね
■ すると,1円玉の面積と半周の長さはどうなりますか?
半径r として
⇒ 面積:πr²=π・1²=π
半周の長さ:πr=π・1=π
■ まとめると,1円玉の面積は約3cm², 半周の長さは約3cm です.図で確認してみましょう.
面積が1cm²の正方形の約3倍に見えますか?
半周の長さが約3cmもあるように感じとれますか?
ウエスト90cmのパンツを円柱に巻き付けると,その直径は約30cmです.意外と細いですね(人体は円柱ではなく,だ円形に近いので横幅が広い).
数学のリーダーは,このような量についての地道な確認作業を怠ってはなりません.
<補足>
■ π≓3 は「否定」されました.しかし,πが3に近い数という量感覚まで否定されている現状があります.結果,π=(ギリシア文字) のみが残っているとすれば,喜劇かつ悲劇です.
■ 冒頭の「はやぶさ」制御に関する円周率の精度についてです.小数点以下15位ともなれば,量子力学の世界.ロケットの制御とは合わないのではないかとの見解があります(「円周率の話とハヤブサの軌道計算の疑問」より)
■ 次回は「必要条件・十分条件」(予定)です.結局は,反例を発見できるかどうか,また,出題方式が選択肢になることが大半ですので,「主役」にはなれない分野です.
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