「採点以前」でつまずく答案
マーク式テスト導入以来,約半世紀になります.その分,記述式答案の扱いが気になります.答案は「相手(採点者)のためにある」・・・これが原則です.
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記述式答案の「命」はその論理展開にあり
p ⇒ q
根拠pを示して結論q … この積み重ねが答案です
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■ 図は最近目にした「気になる」答案例です(ぼかしています).
採点者の視点で答案を見る…
■ 採点は受験者の一生を左右する仕事ですから,それは大変なプレッシャーの中で行われます.
学校や地域,校種にもよりますが,およそ
① 大量の答案を
② 短時間(期間)内で
③ 秘密保持厳守のもと
④ 1室に「かんづめ」状態にされて
採点業務が実施されます.
採点…校内テスト
■ 定期テストなど,校内で実施されるテストは学習到達度の確認が基本で,子ども・指導者双方に有益なデータが提供されます.
その際,採点者は解答者(自校の子ども)の様子を熟知していることでしょう。
したがって,採点について誤解を恐れずに言えば,採点基準の緩和など「善意の配慮」が生じやすいのです。たとえば部分点を多く付けるなどです.もちろん公平になされるにしても,評価基準が次第に「甘く」なっていく可能性があります(→例:途中で基準を変えるごとに全員の部分点を点検・追加していく).
採点…入試
■ 入試の中心である筆記試験は,上級学校での学びにふさわしい学力を備えているかどうかを見極めるために実施され,一般的には得点順に評価が定まります.
■ 首都圏の大学入試では倍率が10倍前後になることもしばしば.仮に倍率が10倍であれば,10人のうち9人に不合格のらく印(×)を押す作業に採点は直結します.したがって校内テストのように「善意の配慮」が顔を出す余地はまずありません.極論すれば「×印を付けるための採点」なのですから.
「採点前」でつまずく
■採点者は答案の「論理展開」に着目して作業を進めます.
しかし,中には採点の前段階で意欲が削がれるケースもないわけではありません.
薄すぎる字や語句の誤用、字・図が小さく判読困難、記号の表記ミスといった答案と遭遇する場合です.
■ ここでは,論理展開上の一般的な留意点ではなく,論述用語の一部として用いる数学記号に焦点を絞ります.
数学記号ミス…初歩レベル
■ 下図は,最近見かけた記述例です.答案の冒頭で出会ってしまうと,このヒト(受験生)は「この程度の記述ルールすら分からないんだな」という決めつけの目で残りの答案部分をよりシビアに観察・評価されること大です.いいことは全くありませんね.
■ ベクトルの内積にも要注意です.「積」と付くからかけ算と同様に●は省略してもよいとの勘違いもありそう.定義に戻りましょう.
外積のこともありますから,●マークはかなり強調してもよいかと.
数学記号ミス…背景を知ろう
■ まずは対数記号から
対数記号のlogarithm ですが,この和訳”対数”は見事ですね(私見).「相対する数同士」を「対」という漢字で表しています ⇒ cf. 本blogで何回も指摘していますが,”有理数”は誤訳の2乗です!ゼヒ,”有比数”にしましょう!!
■ 次に積分記号です.
①dxの書き忘れ,②dxの書く位置 or ∫の書く位置が分かっていない例を紹介します.
本ケースのような場合,ケアレスミスというより,根本のところで記号自体の意味理解がなされていないことが背景にあると考えます.
■ このような知識が備わっていれば,dxの書き忘れとか無意味なところに書くといったミスは激減するはず.
<補足>
■ 数学の記号は,その形成過程においてさまざまな議論・協議があったことでしょう(何しろほぼ世界共通語ですので).そして,すぐれた記号は数学を発展させてきました.先人に思いを寄せて数学記号を眺めることも大切ですね.エッ!数学記号アレルギーですか?
■ 次回テーマは「通り抜けた三角錐」(予定)です.かつて数学セミナーでとりあげられた題材です.3DCADで超精密な三角錐を作って通り抜けを実感しました.
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