「少なくとも~」をスッキリ!
数学が分かるヒトからすれば「何でこれが分からないの?」という例に「少なくとも~」を含む記述や問があります.
例:3割バッターが3回打席に立ったとき,少なくとも1安打する確率を求めなさい.

■ 「少なくとも」を含んだリード文を見ると,思考が停止or頭がグルグル回る・・・というケースも散見できます.
その際「これは読解力の差.数学以前の問題だ」とフンガイしても改善には1ミリも前進しません.
日常生活と「少なくとも」
■ 日常生活の中で「少なくとも」が言葉として登場する場面はどれ程あるでしょうか?
例:「少なくとも3名はあの部屋にいました」← TVドラマの中で

■ 推測ですが,小学生以下の場合.教科書はもちろん,日常会話も含めて”少なくとも”との出会いは意外とないもの.また,中高生も自身の使用頻度は小さいと思います.
そうならば数学リーダーは「少なくとも」を用いる際,新語を説明するくらいの気持ちで論を進めるべきです.
日常語と数学用語の違い
<日常用語>
「少なくとも彼と直接会って謝罪すべきだ」
趣旨:「謝罪の仕方はイロイロあろうが,とにかく最低限出向いて直接謝罪せよ」
⇒ この場合,謝罪の仕方すべて(※全体集合)を示す必要は特にない
<数学用語>
「3割バッターが3回打席に立ったとき,少なくとも1安打する確率を求めなさい」
⇒ { 3打数0安打,3打数1安打,3打数2安打,3打数3安打 } の4通りあり,これ以外にはない(=全体集合).この中で題意に合うのは一つ目以外の3つの場合である
⇒ すべての場合(全体集合)を意識させる.明記すること
まとめると・・・
Ⅰ 日常生活の中で「少なくとも」を扱うとき

「謝罪いろいろ」の全体集合はそれこそイロイロあって要素すべてを明示できませんが,「少なくとも対面でおわびしなさい」は日常会話として相手に意味が通じます.
Ⅱ 数学用語として「少なくとも」を扱うとき

(1)すべての場合(全体集合)を十分意識・明記する
「3打数〇安打」の全体集合は図の場合しかありません.学習者には「これ以外にはないよね」とくり返し確認・念押しすることがpointです.
⇒ このベン図から「少なくとも1安打」を求めるには,「全体集合から3打数0安打(余事象)の場合を引く」考え方が合理的であると分かります.
本問の解 :1ー(余事象の確率)=1-(0.7)³=0.657
よって,3回打席に立った3割バッターは約66%の確率で1本以上ヒットを打つ.
(2)言い換えの工夫
経験則ですが,次の言い換えも効果あります.
少なくとも1安打 ⇒ 最低1安打する
少なくとも2つは赤玉 ⇒ 赤玉は最小でも2つ
と解説した方がより伝わるようです.日常生活の中では「最低」など最小値明示の方が「少なくとも」より使用頻度が高いのでしょう.
Q 100から200までの自然数のうち,5と8の少なくとも一方で割り切れない自然数はいくつありますか?
■ 過日,twitter上で見つけた質問です.いらつき度は結構高いのでは?(答えは70個です.是非,挑戦してください)
<補足>
■ 日常用語と数学用語ですが,数学リーダーは用語に敏感でなければなりません.
■ 次回テーマは「無味乾燥な文字式に意味を」(予定)です.展開や因数分解など代数の初歩は機械的で無味乾燥です.学ぶ意欲を少しでもupさせたいものです.
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