無味な文字式に”味”をつける

数を学ぶはずの”数学“ですが,学習者が上級学校に進むに比例して,数が減り文字が増えます(ある代数の専門書はほとんどのページが文字で占領されておりショックを受けた記憶が).

■ 中高の教科書から文字式を2例取りあげ,無味乾燥な文字式に「ちょっと」を施します.

09 20230904無味乾燥文字式2

a²-b²=(a+b)(a-b)

■ 代表的な因数分解公式で学習者には抵抗感なく受け入れられていますが,意味を付加しましょう.チョットした御利益ですが.

Q1  S=103²ー97² を計算しなさい.

A1 

(解1)そのまま,ダイレクトに計算します.

 S=10609-9409=1200

(解2)上記公式を念頭に置いて

 S=(103+97)(103-97)=200×6=1200

⇒ このような公式適用例は限定されますが,それでも文字アレルギー解消の一助にはなるでしょう.

算数・数学では「答までのプロセス」により価値を置くべきで,その姿勢の有無が最後にモノを言います.

(a²+b²)(c²+d²)=(ac+bd)²+(ad-bc)² ※

■ この恒等式(準公式?)ですが,それぞれが 平方数の和 となっている2数の積平方数の和 で表されることを示しています.

09 20230915無味乾燥文字式1

Q2 次の数を2つの平方数の和で表しなさい.

(1) 533(=41×13)

(2) 26000(=200×130)

A2

(1) 533=41×13

ここで,

 41=25+16=5²+4², 13=9+4=3²+2²,

よって 533=(5²+4²)(3²+2²)

上の恒等式※より

533=(5・3+4・2)²+(4・3-5・2)²=23² +2² 答(①)

(2) 26000=200×130

ここで

200=10²+10², 130=81+49=9²+7²

よって 26000=(10²+10²)(9²+7²)

上の恒等式※より

26000=(10・9+10・7)²+(10・9-10・7)²=160²+20² 答(②)

ここまでは,ある恒等式について具体適用例の確認ですのでヒマにしている子どもの顔が浮かびます.「個別最適の学び」を念頭に,子どもをヒマにさせない工夫をしなければなりませんね.次のような問いかけはいかがですか.

ヒマにさせない次の一手

09 20230906無味乾燥文字式3

Q3  上記①で

533

=(5²+4²)(3²+2²)=23²+2²

としましたが,「平方数の和」の表し方はこの一通りでしょうか?

A3 

533=41×13=(a²+b²)(c²+d²) を満たす自然数a,b,c,dを求める.

a²+b²≧c²+d² としてよいから c²+d²=13 (c≧d)

これを満たすのは,c=3,d=2 のみ.

同様に,a²+b²=41 より,a=5,b=4 となる.

よって,533=(3²+2²)(5²+4²)=23²+2² の一通り.

※なお,533=22²+7² と別の平方の和の形もある(ただし,この場合,左辺の自然数a,b,c,dが存在しない).

Q4 上記②の場合はどうでしょう?

26000の 平方数の和 の表し方は次の一通りでしょうか.

200×130=(10・9+10・7)²+(10・9-10・7)²=160²+20²

A4

26000=2000×13 とすれば

(44²+8²)×(3²+2²)=(44・3+8・2)²+(44・2-8・3)²

                           =148²+64² も解の一つになる.

<補足>

■ Q3, Q4についてですが,この両者の違いは,前者が533=41×13 と素因数分解されていることにあります.

■ 次回テーマは「背理法の読み取り誤解①」です(予定).「曲者」とでも言うべき背理法ですが,√2:無理数 の証明を例にとり,背理法の核心部分をしっかり押さえたいものです.

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