大学共通テスト”選択肢”に注目します!
間もなく50数万人が受験する大学共通テストが実施されます.ここではテスト内容ではなく(畏れ多く),マークシートテストに宿命的に伴う選択肢にまつわる話題を提供します.
■ 大学共通テストを筆頭に,マークシートによる解答方式(以下,マークシート式)が中高大入試でかなり多く採用されています.
■ ’21共通テスト1設問ごとの選択肢数
国・英・・・5択が減り大半が4択
理・社・・・4,5択が多い.例外的に8,9択もある
数・・・□に数や文字を選ぶ変則形
5択:偶然正答率 20% のはず・・・
■ 各選択肢ごとの正答率は,理論上5択問で20%,4択問で25%になります(実際は,許容される範囲でバラツキます).マークシート式を導入する際,この理論上数値を踏まえて問題作成にあたることは,当然の必須要件です.
■ しかし,以前より高校入試も含めマークシート式の”選択肢バラツキ具合”に?を感じてきました.次は,以前,毎日新聞「みんなの広場」に投稿し,掲載されたものです.
■ ’19大学入試センター試験国語では,5択32問中,選択肢1,2の正答率はそれぞれ9%,34%でした(※).受験アドバイザーが「マークで時間がなくなったら,①選択肢の最初と最後は外せ ②わからないときは3番 ③数学なら,2か3にマークせよ」という直前指導もあながち的外れでないことになります.
※ 常識的には異様・異常な数値かと.なお,理・社では,おおむね適切なバラツキがありました.
■ ’21にスタートした共通テストでは4択問が増加の目立ちました.最初と最後を外したら,ナント2択問ということになりますね.
■ 大学入試に限らず,高校入試でもしばしば見受けられるのが,各設問の中でも思考を必要とする”核心問”(※)で,選択肢の最初と最後に正解を置かないケースです.
※作成側にとってリキを入れた問であり,配点ウエイトも高い傾向があります.
→ 各都道府県の高校入試(数年間分)もチェックしてみてください.杞憂なら幸いです.
原因とカイゼン策
■ 一般論になります.作問作業に関わるメンバーのご労苦には敬意を表します.
作問専業部署がない場合,おそらく各メンバーは兼務の形で半年間以上,”拘束”され,出題⇔検討の作業をエンドレス(作問で”ベスト”はあり得ないのです)で続けます.そして,どこかの時点で「妥協→決定」となるのでしょう.神経戦のためか表情もビフォー・アフターで大きく変わります.
これらの事情を踏まえた上で,本テーマの原因を探ります.
■ 作問メンバーは,出題内容にありったけ集中します.その際,選択肢の配置は,本質ではないため,眼中に入りません.
■ メンバーの多くは教職分野(行政や学校含む)に関わりのあるヒトです.作問中も生徒の顔が浮かぶこともありましょう.特に,点数ウエイトが高い核心問題の正解の配置については「いきなり最初が正解とは思わないよな~」,「引っ掛け問題にしたくない」などと考えたとしても,その心情は理解できます.ただ,メンバーの大半が同じ心情に浸っていたらどうでしょうか.ここがpointなのです.
<カイゼン策>
■ 作問メンバー(チーム)は,通常,大別して,A教科科目の作成 B総務(日程や外部との調整,予算等チーム全体の業務担当)に編成されます.
■ そこで,選択肢の正解順配置だけは,Aから切り離し,B総務に任せることを提案します.総務担当者は,統計学に基づき,ランダム関数等を用いて機械的に正解番号を決定していき,一旦決定したらヒトによる調整はしないことです.その際,①班と協議することは厳禁とします.
⇒ このような内部ルールは,文書で明文化されなければなりません.人事異動でヒトが変わると,「元の木阿弥」に返ることはよくあることですから.
マークシート式の功罪
■ 推理小説を読むとき,冒頭に
犯人は a,b,c,d の中にいる.ただ,a とd は外しておいた方が賢明だろう
などと書かれていたら,読む気が失われます.
■ 「最初と最後は外せ」みたいなアドバイスが”効く”学力とは何でしょうか.処世術の推奨かと.
マークシート式が本格導入され,約半世紀です.マークシート式を全面否定はしませんが,省力化・効率化を優先させ過ぎたのでは?と感ずる昨今です.
マークシート式は,正解が選択肢の中に存在することを前提にしていますので,消去法が本質といっても過言ではありません.学習指導要領が唱える崇高な精神と反するのではと思うくらいです.
■ マークシート式テストで易きに流れてはいないか,厳しめの目で見張っていく必要があります.特に,入学試験には「遠慮無用」です.
■ かつて,大相撲で7勝8敗と8勝7敗の確率は同一なのに,なぜ7勝8敗の力士が少ないのか?という疑問がdata付きでありました.いろいろな経緯があって(かなりの犠牲を払って),今日ではようやく不信感が土俵から払拭されたようです.
スポーツは結果が見えるからまだ対応も可能.しかし,学力は・・・.
<補足>
■ 次回は,「三角関数合成の唐突感をなくす・減らす」(予定)です.三角関数合成は,筋をなぞるとそのとおりなのですが,突然√a²+b² で割るという「唐突感」は否めません.
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こんばんは。
面白いところに目を向けているなと思いました。
確かに、選ぶ中に正解があるというテストに慣れていくと、いろいろなことをそういう発想で見てしまいますね。どこか、教育の本質とは違う気がします。
それはさておき、たくさんの人々を短期間で振り分けるには、マークシート方式も仕方がないのかもしれません。
僕も中学の国語の問題を作って来ましたが、4択とか5択の場合、どうしても最初に正解を持っていくのは抵抗があった気がします。
そういう面では、あ北さんが提案されるように、問題を作る人と4択5択の順番を考える人とを分けるのはとてもいいアイデアだと思いました。
サイ 様
地味blog へのご訪問,ありがとうございました.
サイさんと同様,教育の本質とのずれを感じてきました.マーク式への不満・不信はかなり以前から抱いております.
数学は比較的マークの弊害が少ないと見られていますが,(1)回答欄の枠数=正解の桁数ですので,かなりのヒントとなっています.(2)思考方向を,出題者のそれと合わせることが必須.したがって,受験生の自由性や柔軟性,端的に言えば,出題者を超える思考を最初から拒否しています.
2/3÷4/5=2/3×5/4 となる理由をマーク式で問うことはまずムリ.思考過程を見ることの出来ないマーク式が,本格導入されたのが,昭和54(1979)年の共通一次です.
以上のことから,マーク式の「損益表」は,損が益をはるかに上まわると考えます.
ノーベル物理学賞受賞の梶田隆章氏(川越高校 → 埼玉大学 → 東大院)が共通一次直前の世代(のはず)です.
つまり,マーク式導入以降のノーベル賞受賞者は出ていません.
「これまでのところ」ですので,今後は分かりませんが,注目していきましょう.
これからもよろしくお願いします.
あ北のネギボーズ