1~1000まで書き続けた小1生(改訂版)…学習の進んだ子ども(その3)
算数・数学教育に関わって「学習の進んだ子ども」さんとどう向き合っていくか,はテーマの一つになります.基本的には,大歓迎で”喜び・驚き”です.時には”戸惑う”こともありますが.
「学習の進んだ子ども」の定義として,”難問が解ける”が一般的には通用しそうですが,もっと広角で見てみましょう.
■ 本blogは1/15にupしましたが,その後,紹介したaさんについて事実誤認・勘違いがわかり今回改訂いたしました.改訂前の箇所は小文字表示としましたので比較して違いを確認していただければ幸いです.
1 から 1000まで書き続けた小1生
■ 詳しい経緯は後述しますが,学校で10進位取り記数法を習ったばかりのaさん(当時,小1生)の紹介です.
aさんは(想像も入ります)
10進位取りルールを守ればいくらでも数えられ書き進めることができるんだ!
100を超えて1000までだって!
とやや興奮しながら帰宅しました.そして,意を決して1000に向かってノート(よい子の算数帳)に数を書き始めたのです.
どのぐらい時間がかかったのか,途中でやめようと思わなかったのか等々の心中は不明ですが,とにかく最後1000まで書き続けました.
■ 小1では,1~100 までの数を習います.親とフロに入った幼児が100まで数える光景の延長ですね.
{ 0,1,2,…,9 }までの10ヶの数で,すべての自然数を表すことができる!
これが10進法の神髄で,ヒトが数千年かけて得た知恵&財産です.
特に,「0の発見」が決定的でした.
⇒ ローマ数字(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ…)や和数字(一,二,三…)には0がなかったので 例えば, 20230115×1234 を書き表し計算することは実質ムリ
aさんのすごいところ(元の文)
■ 345 は 3・10²+4・10¹+5・1 の意味です.この10進位取り記数法の原理・ルールを小1のaさんが理解した上で,1000までの数を書いたのではないと思います.
それでも何とか自分なりにルールを解釈しながらゴールしました.すごい!
<aさんの心中>・・・勝手な想像ですが
・先生はどんな数でも書けるっていったけど,ホントに1000までの数が書けるのかな?書けなくなったらどうしよう.
・9の次の数をなぜ10にするんだ?
・19の次は,191じゃなくて20とするのか!
・0って何もないって習ったけど,「0」って書くんだ…そういうルールなんだ
・99の次は100.すると199の次は200か
・・・・・
■ 見ていたわけではありませんが,aさんは1人で黙々と「何か」と格闘しました.相手はルールの確認でしょうね.
■ aさんについてです.先日,改めて「爽快!2^100三話」(遊星社)で確認したところ,核心部分で事実誤認が分かりました.aさんは「はるかにすごい」小1生でした.当方の理解度・感度の低さを思い知らされた次第です.
aさんのすごいところ(改訂文)
■ 小1生aさんは先生が教えてくれた10進位取り記数法の原理・ルールを理解し自信をもちました.
そして「よい子の算数帳」の上に1から順に数字を書き始めました……100に至り,3桁の数に突入.だんだんと数を読み書き記すのが面倒になってきますが,原理を元にすれば100を越えて書き進めることができると確信したのです.
もちろん幼心に1000まで書き続けられるかどうかの不安も感じていました.その不安と立ち向かいながら1000まで書き切ったとき,達成感に歓喜しました.
位取りという人間の知恵を体得してそれを極めていくと,いつしか人知を越える世界まで手が届くという,とんでもないところに足を踏み入れてしまったというような気持ちにさえ襲われたと「爽快!~」で述懐しております.
■ 学力の向上には,①全員の必須目標達成という引き上げと,②個々の子どもの伸長,の2側面があります.
ややもすると①のみが強調されており,②は本人や家族,塾等に任せられている状況もあります.自戒を込めて言いますが,②については伸長の前提があります.それは,「才への畏れと才を見逃さない」という構えで,算数・数学リーダーには不可欠のセンスですね.
実は aさんは・・・
■ 先だって「第10回算数・数学の自由研究作品コンクール」(理数教育研究所主催)表彰の集いが東京市ヶ谷アルカディアで開催されました.
■ 審査委員長の根上生也氏(横浜国大名誉教授)が審査経緯の概要を説明いたしました.
全国各地域ごと,各段階を経て最終審査まで辿り着いた優れた作品に,固定された評価尺度はないが,子どもの言葉で綴られているか,読み手の心に響くものかどうかなどが決め手になっている.
■ このように氏は
各審査員は,作品について単なる問題解きで終始せず,正に自由研究たる「自由」を根底に据えて審査しているという趣旨を熱く語ったのです(⇒例年どおり「ノー原稿」スタイルで).
その延長で,つい口にしてしまったのが小1生aさんの紹介です(と受けとめました).そしてあいさつのエンドで「a=自身」であることをやや遠慮がちに明かしました.
■ この際,小1生aさんが氏であったということよりも,かつて「1000まで書き続けた小学生がいた」という事実が重要であり,ズシンと心に響きました.
未知のことに対する姿勢・挑戦力・忍耐力,そして,よい意味での頑固さ…これらは,aさんの思考を支える土台であり,aさんのノート(よい子の算数帳)は私たちに学ぶべき「学び方」を示しております.
学び・学び方は,年齢や時代を超越するものですね.
<補足>
■ 本blogは1/15に公開しましたが,その後,内容に係わって事実誤認がわかりましたので訂正・修正を加えました.
■ 次回のテーマは「答案における乱字・汚字」(予定)です.入試真っただ中ですので,一言.
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