背理法あれこれ② ”誤読”(素数の無限性)
前回に続いて背理法の2回目です.背理法はいかにも数学らしい証明法ですが,その際,背理法の核心部分を浅読みor誤解しているケースも散見できます.
素数は無限にある
■ 数学の定理の中で,主張のシンプルさ&証明自体のユニークさ と言えば何?と問われると「素数は無限にある」という定理を挙げるヒトも結構いるかと.
■ 次はユークリッド(紀元前3世紀?,ギリシア)による証明です.
どの箇所が誤解されやすいか
■ 赤下線の数Pですが,
P=p₁p₂p₃…pn+1
という”素数の積+1”という人工的な作りでありいかにも素数という顔をしていますね.そこで
⇒ Pは 素数だ! と即断して「これは矛盾!よって,背理法により…」と論を進めるヒトがおります.
これは,背理法の核心部分を理解しておらず誤認・誤読です.
→ 式Pの作りから判断したのであれば,式Pは素数を次々に産み出す素数生成式ということであり,証明自体が不要!となります.
■ かつて,Oさん(当時A大学附属中2生)は自由研究で
P=2・3・5・7・11・13+1=30031=59・509 という例を挙げ,
p1,p2,p3,・・・,pn が素数でも,P=p1p2p3・・・pn+1 が素数になるとは限らない
ことを指摘しました.
ユークリッドによる証明の再確認
■ 素数が有限n個しかないと仮定する
→ nは”素数の個数を示す最大数“であり,n=6や100, 100000, 1兆でもなく,数で表しようがなくてnとしています
→ したがって,その最大数nにたどり着く前に,あるk個の素数に対して
P=p₁p₂p₃…pk+1 が素数でなかったとしてもあり得ることで問題にならない
(実際,2・7+1=15 や Oさん指摘の例)
■ nが1兆や1京をはるかに超える巨大数ではあるが「有限個n」と仮定して
P=p₁p₂p₃…pn+1 というあらたな数Pを作ると
Pは素数であり,かつ各素数よりもさらに大きいので,素数の新メンバーである.
これは素数の個数が最大で有限n個とした仮定に反する.
よって,背理法により素数は無限に存在する.
<補足>
■ 素数の無限性については,「美しい高校数学の物語」では4通りの証明法が紹介されています.中でもサイダックによる簡潔な証明(背理法を用いない)には驚かされました.
ただユークリッドによる証明は背理法理解のための格好の例ですので今後も「筆頭」証明法であり続けるのではと思います.
■ 次回テーマは「極限値,なぜx≠a」(予定)です.xはaに限りなく近づく,しかし,xはaに到達しない.何とも不思議な定義ですね.
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