(sinx)’=cosx の図形的理解

(sin x)’=cos x を体感しよう

公式により計算は一応出来るが,実のところ,意味理解は出来ていない生徒や学生は少なからずおり,微積計算でもしかりです.

微分係数 f'(a) は,定義により曲線 y=f(x) 上の x=a に対応する点Pにおける接線の傾きを表すのでした.つまり,右上図で,f'(a)=tanθ というわけです.
ちなみに,接線の英訳は,tangent です.

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たとえば,f'(3)=1

 曲線上で x=3 に対応する点の接線は,x 軸と45°の角をなす

さらに,a をx で置き換えたものが f'(x) です(→ このあたりの臨機応変さ・自由勝手さに苦しむ生徒もいます)

したがって,f'(x) は,曲線上の点 P(x,y) における接線の傾きを表します.

⇒ つまり,点x=x における接線の傾きです

        例:y’=f'(x)=2x

微分の定義に基づいて y= sin x の導関数を求めると,複雑な計算が必要なのですが,確かに y’= cos x が導かれます(高校数Ⅲ教科書).

それにしても,sinの微分結果がcos とは! 何とも不思議なコトだという思いを抱かれた方も多いのでは? この不思議感を払拭すべく,以下のように図形的解釈を試みました.

右図で,直線mは,y=sin x上の任意の点Pにおける接線を表しています.
← mは,画面では関数グラフソフト grapes を用いて正確に引かれていますが,実際は,定規を使用して手作業で接線を引きます(アナログ作業).


さて,この図から m の傾き = f'(x)=cosx となることを図形的に説明してみましょう.いかがですか?

右図で,Pは y=sinx 上の任意の点であり,m はPを接点とする接線です.
また,点Q,Rはそれぞれy=cosx上,x軸上にあり,3点P,Q,Rは一直線上に並び,PR⊥x軸です.
さらに,線分PT//x軸,PT=1,Sは m 上の点で,ST⊥ x軸,とします.

※ この図形的解説はオリジナルです(以前,ある会合でご披露.反応はあまりなかったですね.研修会でなく「会合」がよろしくなかった!).

09 20200514sin微分図解
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<授業実施上の留意点>

① y=sinx と y=cosx のグラフが同時に描かれたプリントを用意します.その際,点(1,0)は明示します(PT=1 を作図するときに1の長さが必要).また,x軸とy軸の目盛り幅は,1対1 でなければなりません.
② 点Pは生徒に任意に打たせますが,45°<x<70° あたりに収まってもらうと実際的になります.
③ 接線mは,アナログ的に,つまり,定規と鉛筆を用いて描くことが必須条件です.接線の公式計算によってmを求め,正確に描いたプリントを配布してしまったら,本末転倒であってまったく意味をなしません.多少のズレはあったとしても,ほぼST=QR であることを生徒に「確認」してもらいましょう.

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(sinx)’=cosx の図形的理解” に対して3件のコメントがあります。

  1. ぷりくら、TMえぼりゅーしょん より:

    この話は面白いと思うので、少し考えてみました。
     まず、「会合での反応はあまりなかった」のは当然でしょう。研修会でも会合でも、どちらでも反応はイマイチだと思います。図形的解釈をするのは良いが、正弦曲線をコンプー太で描くのが良くない。やっぱアナログですよ。「昭和人類」たるものは「特に」です。
     さて、ここで質問。大昔、私達人間が初めて「楕円」を見たのはどんなときでしょうか?
     一見、無関係な質問に見えますが、じつは「楕円」と「正弦曲線」とは同じものです。故に、この質問には意味があるのです。

    1. ぷりくら、TMえぼりゅーしょん より:

      本ブログ2022年6月5日付の
        「円錐の斜平面cut ⇒ だ円」を体感する
      で、
       円柱を斜平面で切り取ったときの切り口がだ円になること
      とやっています。木の丸太を斜めに切った切り口が、大昔の人間が初めて見た楕円でしょう。同じ場所に「レストランでよく見かける注文伝票を差し入む器」の写真もあります。
       さて、注文伝票を差し入む器の周りに紙を巻き付け、その紙を斜めの切断面に沿って切ります。巻き付けた紙を平面に開くと、あ~ら、不思議。さて、何が現れるでしょうか?
       円柱の中身は不要なので、中空の竹を斜めに切った切り口でやりましょう。これ即ち「竹槍」です。
       2022年6月5日付記事 “「円錐の斜平面cut ⇒ だ円」を体感する” の、竹槍に入った家具屋姫の絵は最高だ! 竹槍に入った家具屋姫、万歳!
       実際には、巻き付ける紙は少し厚い紙の方が、定規が引っかかるので接線がひきやすい。また、巻き癖がつく紙が良いでしょう。立体であることがよくわかる。

    2. kishiroot より:

      ぷりくら 様
      コメントに「面白い」とあり,ありがたいと感じております.
      ・サインカーブをPCで描くべきかどうかについてです.実際に作業させると、①サインカーブ等のグラフの描き方があまりに粗雑、②接線も同様で,y=x² の場合でも接線がなかなかそれらしい状態に収まらない,という実情があります.目的が「(sinx)’=cosx の体感」でしたので,途上の躓きを避けるため,PCに頼ったところでした.
      ・楕円と正弦曲線の件は,1/13付けのコメントで内容が理解できました.ありがとうございます.家庭科の教科書で,背広の肩口がほぼ楕円形であり,その際,縫い付ける袖の曲線にサインカーブらしき曲線が登場する話と合致しますね.
      ・「会合(=飲み会と数学)」については,まだまだいろいろありまして・・・いつかの機会に話題にします.
      まずはお礼まで

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